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「やる気ないなら帰れ!」春高3連覇は“監督ブチギレ”から始まった…高校生がホレる駿台学園データバレー、強さの秘密は“熾烈すぎる競争生活”
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph bySankei Shimbun
posted2025/01/14 17:01
1月開催となった春高バレーでは史上初めて3連覇を達成した駿台学園。身長197cmの川野琢磨など将来が楽しみな選手が躍動した
一人でトボトボと宿舎に帰る。その時はまだ「何で俺ばっかり」と投げやりな気持ちもあったが、後悔の念に駆られたのは、翌日のエキシビションマッチを見ていた時だ。満員の観客が見守る中、楽しそうにプレーする姿を見たら、心底「自分も試合に出たい」と思った。
部員数は64名。全国大会に出場する強豪校の中では大所帯を誇る駿台学園は、レギュラーとリザーブを含めたAチームと、春高やインターハイのメンバーには選出されないBチームがある。「駿台は選手がいるから勝てる」と揶揄する人もいるが、勝ち残るためには熾烈なチーム内競争がある。
求められたことを「できるか、できないか」ではなく「やるか、やらないか」。やらなければ、落ちていくだけ。
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「ここで自分が(トスを)上げられるチャンスがあったのに、何やってるんだ、ってめちゃくちゃ思いました。このままじゃ落ちるだけだから、悔しいなら自分が変わらないといけない。次の練習から、めちゃくちゃ声を出して、とにかくやれることは何でもやろう、って自分の行動を変えました」(大坪)
翌日の練習からは「コート内でもコート外でも必死だった」という大坪はインターハイ、国スポに出場した。結果が伴わなければ「その都度注意された」と笑うが、「もっとできるだろ、と言われて自分の気持ちも切れなかった」と振り返るように、試合出場の機会が限られる中でも前向きに取り組むことができた。
だが、どれほど頑張っても、越えられない壁とも言うべきライバルもいた。誰よりも、大坪自身がそのすごさを知っていた。
「(三宅)綜大、ほんとすごいですから。東北の瀬川(桜輝)選手、慶応の松田(悠冬)選手……世代No.1のセッターと言われる人は他にもいますけど、トスの質やトス回し、ここぞという場面でどこを使うかのチョイス。すべてにおいて綜大が世代No.1のセッターです」
タレント軍団を操るセッター
駿台学園には豪華なタレントが揃う。試合を見れば2枚エースの川野琢磨と櫻井信人、攻守において活躍するミドルブロッカーの敷浪孝一、高澤大馳といった攻撃陣が目立つが、駿台の強さを語るうえで欠かせないのがセッター三宅の存在だ。
相手のブロックやディフェンスを見ながらミドルを多用したかと思えば、バックライト、パイプ、前衛の平行や時間差など多彩な攻撃を織り交ぜる。しかも相手のサーブを受けた直後、パスが返った状況だけでなくラリー中こそ攻撃を単調にすることなく次々引き出しを開けていく。
3連覇を決めた決勝・東福岡戦は、まさに三宅の真骨頂ともいうべき試合だった。