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「やる気ないなら帰れ!」春高3連覇は“監督ブチギレ”から始まった…高校生がホレる駿台学園データバレー、強さの秘密は“熾烈すぎる競争生活”
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph bySankei Shimbun
posted2025/01/14 17:01
1月開催となった春高バレーでは史上初めて3連覇を達成した駿台学園。身長197cmの川野琢磨など将来が楽しみな選手が躍動した
なぜ、これほど強いのか。
駿台学園の強さにつながるエピソードがある。
連覇を達成した昨年1月のことだ。SVリーグ男子・VC長野トライデンツのホームゲームで、駿台学園と地元の岡谷工業によるエキシビションマッチが行われることになり、前日から両校の練習試合が行われていた。
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エキシビションマッチ本番は「卒業試合」として行われたが、練習試合は発足したばかりの新チームにとっては願ってもない実戦の場となった。だがスタート間もない“新生・駿台学園”において、ひとつ誤算があった。2年時からレギュラーを務めていたセッターの三宅綜大を体調不良で欠いたことだった。
代わりに起用されたのは、控えセッターの大坪泰介だった。
梅川監督の激怒「やる気がないなら帰れ」
身長174センチの三宅に対して、身長180センチ。中学時代には東京選抜で全国大会を制し、大会のベストセッターを受賞した実績を誇る。大坪にとって最初のチャンスだった。
しかし、練習試合では何もかもが噛み合わなかった。プレーがうまくいかない分、声を出したり走り回ったり、今振り返れば「やれることはもっとあった」と大坪は振り返る。だが、周囲にアプローチすることもなく俯くだけの大坪の態度は、周りを盛り上げるどころか士気を下げてしまった。
コートに立てるかどうかを判断するのは実力だけ。中学時代どころか前年の実績すらも関係ない。そう公言する梅川監督が、大坪の態度を見逃すはずがなかった。
練習試合を終えるとすぐに大坪と1対1でのレシーブ練習が始まった。士気を高めるべく、梅川監督なりの喝なのだが、大坪はそれすらもその時は前向きにできなかった。
「何で俺ばっかり、あー嫌だな、って。たぶんそういう感情が顔に出ていたと思うんです。だから先生は『もうやらなくていい。貴重な練習時間に、やる気がないなら帰れ』と。頑張らなきゃいけない時に、自分が頑張れなかったんです」
アウェイの遠征時、ましてや3年生の引退試合で「帰れ」と告げられる。日本一になるためには時に厳しさも必要とはいえ、さすがに異例の出来事だ。だがその夜が、大坪を変えるきっかけになった。