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「ケイセイを勉強のために投入するのは…」親友・河村勇輝はNBAデビューも…富永啓生なぜGリーグで苦戦? 出場機会を与えないコーチの真意
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byAP/AFLO
posted2024/12/26 11:21
Gリーグでは十分な出場機会を与えらていない富永啓生(23歳)。焦る気持ちを抑え、懸命に前を向く姿を追った
ただ、プレータイムが確保できないのにはもちろん理由がある。バスケットボールファンなら想像できるかと思うが、マッドアンツのトム・ハンキンスHCが指摘する富永の課題はやはりディフェンスとフィジカル。58歳のベテラン指揮官の富永の課題に関する言葉はシンプルであり、想像以上にダイレクトでもあった。
「ケイセイはまずディフェンス面で、自分の体格、スピード、強さの不足をどう補うかを考えなければならない。GリーグやNBAではよりフィジカルなプレーが許容され、カレッジではファウルだったプレーが許される。その中でプレーするにはかなりのスピードと強さが必要だ。彼はボールがどこにあり、どのように動いているかを考慮し、守備面で適切なタイミングで適切な場所にい続ける努力をしなければいけない。小柄な選手がどう効果的にプレーできるかについて学ばなければいけない」
学生時代から振り返っても、富永はディフェンス面で高い評価を得てきた選手ではなかった。日本代表でも守備難が妨げになり、パリ五輪ではまとまったプレータイムを得られなかったのは記憶に新しい。プロレベルでもその点が改めて指摘されていることは、誰にとっても驚きではないはずだ。
「勉強のために投入するのは難しくなっている」
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チームが好調ならばまた雰囲気は違うのかもしれないが、マッドアンツはGリーグで現在7勝9敗と苦しんでいる。ハンキンスHCは起用法に関して苦しい胸の内も明かしており、そこで富永の足りない部分が改めて炙り出されている印象もある。
「ケイセイがより大きく、強く、速い選手たちに追いつくためには経験が必要だ。ただ、現状では私たちが7、8分の間、ケイセイを勉強のためにコートに投入するのは難しくなっている。その短い時間で相手に6〜8点くらいアウトスコアされ、ケイセイのミスがその一因になっているとしたら、彼をコートには残し難い。私たちがもっと優れたチームであれば、彼に多少のミスがあっても経験を積ませるためにプレーさせる余裕があるのだろうが。これはケイセイだけの問題ではないんだ」
もちろん富永のプロキャリアはまだ始まったばかりである。本人はネブラスカ大よりも厳しいプレー環境(「ネブラスカの時はチャーターフライトでしたが、今は5時間以内であれば全部バス移動なのですごく大変ですね」)や、Gリーグのプレースタイル(「大学と一番違うのはみんなが得点取りたいから、個人プレーに走ることが多くなってくる」)への適応の難しさにも言及していた。やはり慣れは必要であり、時間が解決してくれることも少なからずあるのだろう。