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バスケットボールPRESSBACK NUMBER
「ケイセイを勉強のために投入するのは…」親友・河村勇輝はNBAデビューも…富永啓生なぜGリーグで苦戦? 出場機会を与えないコーチの真意
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byAP/AFLO
posted2024/12/26 11:21
Gリーグでは十分な出場機会を与えらていない富永啓生(23歳)。焦る気持ちを抑え、懸命に前を向く姿を追った
コート内外で決して器用なタイプではない富永は、ネブラスカ大時代も1年ごとにパフォーマンスの質を上げていった。プロでも同じことが起こっても不思議はなく、見限るのは早すぎる。今季中盤戦以降の向上が期待される中で、ウィンターショウケースでは心を許せる親友である河村と再会し、リラックスできたことはいい気分転換にもなったはずだ。
「昨日も今日も一緒にご飯食べました。ホテルも一緒なんで、富永の部屋に行ってずっといろんなことを話せました。元気そうでよかったです」
フロリダで4日間を富永とともに過ごした河村も、思った以上に明るい盟友の笑顔に安堵した様子だった。
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ただ……すべてのあとで、富永の行く手には容易ではない道が待ち受けているのは間違いない。特に目標をGリーグでの主力定着だけではなく、そのさらに上(=NBA)に据えるのであればなおさら。前述した通り、サイズ面のマイナスをカバーするには相当な努力が必要なことは、ハンキンスHCのこんな言葉からも明らかだ。
「Gリーグ、NBAでやっていく上で問題になるのは、ケイセイのようなサイズの選手は本来みんなPGだということ。ボールをさばき、オフェンスを統率する選手たちだ。だが、ケイセイはシューティングガード(SG)。サイズ的に同等のSGとしてNBAにはセス・カリーがいる(カリー185cm、富永188cm)。カリーはベンチ登場のシューターだが、ディフェンスで弱点にならないだけの強さがある。ケイセイも同じように守備面で大きく向上し、サイズ、スピードの不足がチームに影響を与えないようにしなければいけない」
渡邊雄太、八村塁、河村勇輝……
この7シーズンで渡邊、八村塁、河村と3人もの日本人NBAプレーヤーが誕生し、感覚が少々麻痺しかけた部分もあったのかもしれない。だが、世界最高峰のリーグの頂は依然としてとてつもなく高く険しい。好調時には米カレッジレベルでもほとんど無双することができたシューターが、Gリーグですぐに壁にぶつかった事実は改めてその難しさを突きつけてくる。
「フラストレーションはもちろんありますけど、とりあえず信頼してもらえるように頑張るのが今の自分の課題。アピールし続けていくことが大事と思っています」
最後は引き締まった表情でそう述べた富永は、最新の試練を突破できるのか。さらに上を目指すハングリーな選手ばかりが集ったウィンターショウケースは、改めて現実を直視する舞台でもあった。簡単ではなくとも、ここから学び、成熟し、成長していってほしいところ。稀有な爆発力と魅力を持ったサウスポーのシューターが、再び飛翔していくことを期待しているのは日本のファンだけではないはずなのである。
〈前編から続く〉