Sports Graphic NumberBACK NUMBER

アスリートこそが社会課題解決のリーダーとして活躍する存在に。「HEROs AWARD 2024」を受賞した、5組の活動とは? 

text by

矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

PROFILE

photograph byShigeki Yamamoto

posted2024/12/27 11:00

アスリートこそが社会課題解決のリーダーとして活躍する存在に。「HEROs AWARD 2024」を受賞した、5組の活動とは?<Number Web> photograph by Shigeki Yamamoto

「HEROs AWARD 2024」の受賞者。左からオットーボック・ジャパンの深谷香奈さん、陸上の福士加代子さん、ボクシングの那須川天心さん、野球の筒香嘉智さんの代理の筒香裕史さん、日本ラグビーフットボール選手会の川村慎さん

 パラリンピック修理サービスは大会において選手の義足や車いすなどの修理を無償で行なう活動。パリ2024パラリンピックでも本社のあるドイツをはじめとする世界41カ国のオットーボック社員がパリの選手村や競技会場で修理を行なった。壇上に上がった深谷さんは、日本では労災以外のケースでは障害者総合支援法という法律で義足が支給されるが、この制度が他の先進国と比べて貧弱であることなどを指摘。「皆様に、病気や事故で義足になったらどうなるのだろうということを知っておいてもらいたく、お話しさせていただきました」と思いを述べていた。

子どもたちと直接触れ合い、夢や希望を

 続いて表彰はアスリート部門へ移り、最初に紹介されたのは「『京のスポーツ夢バンク』『福士加代子RUNプロジェクト』を中心とした活動」の福士加代子さん。子どものスポーツ離れや地域創生などの課題解決を目指し、子どもたちと直接触れ合うことで夢や希望を育もうという事業への参画や、自身が代表となって立ち上げたランイベント「笑って走れば福来たる駅伝」で地域の賑わいや人のつながりを創生していることが評価された。

 オリンピックに4度、世界選手権に5度の出場を果たした現役時代から絶やさぬ笑顔でも人気だった福士さん。「イベント中に一度でも笑わせるようにしています!」と元気あふれる声でスピーチすると、会場全体にも笑みが広がるようだった。

 続いて表彰されたのは、出身地である和歌山県橋本市に2億円の私財を投じて建設した総合スポーツ施設「TSUTSUGO SPORTS ACADEMY」での活動が評価された筒香嘉智さん。同施設は約3万平方メートルの土地に両翼100メートルを誇るメイン球場と、45メートルの内野フィールド、室内練習場を備えており、子どもたちがけがを恐れず思い切ってプレーできるようにという願いから、メイン球場には天然芝を採用している。そして、筒香さんが抱く「自分で考え、決断し、行動する」ことができる子どもの育成を理念とし、答えを教えすぎない指導を徹底している。

 この日、都合により欠席となった筒香さんはビデオメッセージで登場。筒香さんは同アカデミーで少年野球チームを結成しており、「アスリートはもっと(スポーツ界の発展のために)還元していくべき。その一つのモデルとなるチームになっていきたきたい」と抱負を述べた。

 また、プレゼンターを務めた和田毅さんは2023年の受賞者。「自分自身も地元の島根で少年野球大会を開催しているのですが、狙いはこんな大会があったらいいなという思い。筒香さんもきっと、こんな球場があったらいいなという思いでつくったのだと思います。僕自身も今年で引退したので、筒香選手が作り上げた、生きる力を育む球場を見に行きたいし感じたいと思っています」とエールを送った。

【次ページ】 日本の力を呼び起こす存在へ

BACK 1 2 3 NEXT

ページトップ