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「久保の顔面が集団暴行を受けたかのように…」50発の滅多打ち、試合後には嘔吐も…RIZIN“凄惨マッチ”の是非「レフェリーが止めないから殴り続けた」
posted2025/01/04 18:19
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
グシャリ。グシャリ。グシャリ。
パウンドやヒジが打ち下ろされるたびに、ハンマーで人が叩かれているような錯覚に陥った。MMAのファイトを見てこんな戦慄が走ったのは、いつ以来だろうか。
RIZIN設立10周年の節目を飾る2024年大晦日の『RIZIN DECADE』。背筋が凍るような攻撃を仕掛けていたのは、久保優太との一戦が組まれたラジャブアリ・シェイドゥラエフ(キルギス共和国)だった。
50発の滅多打ち「集団暴行を受けたかのように…」
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グラウンドで下になった久保に当て続けた打撃の数は、1ラウンドだけで少なくとも50発。久保の顔面がまるで集団暴行を受けたかのように鮮血に染まり、内出血だらけになるのに時間はかからなかった。シェイドゥラエフの攻撃は相手のスタミナを削るとか、リングジェネラルシップ(主導権)をとるといったレベルではなかった。一発一発から、対戦相手に致命的なダメージを与えかねない破壊力を感じさせた。
筆者の脳内で、眼前の試合とPRIDE時代の戦慄のシーンが重なり合った。そう、2004年6月20日、セルゲイ・ハリトーノフ(ロシア)がセーム・シュルト(オランダ)をマウントに捉え、右の鉄槌で滅多打ちにしたあの試合だ。そのときのハリトーノフは右足でシュルトの左腕を制したうえで鉄槌を放っていた。ほとんど身動きができない状態のシュルトに無慈悲な鉄槌を何度も打ち下ろしていたのだ。血まみれになったシュルトの顔がモニターに映されると、あまりの凄惨さに観客席からは悲鳴も上がった。
シェイドゥラエフの猛攻にも近いものを感じた。ややもすると、相手に重篤なダメージを与えかねないオフェンスにも映った。あの日のハリトーノフの再来――容赦のない攻撃の理由について、シェイドゥラエフは表情を変えることなくこう語った。
「いつレフェリーが試合を止めるのかと思ったけど、止めないから殴り続けたんだ」