第101回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER
〈帝京大学〉「2区は譲れません」確かな成長の実感を胸に2度目のエース区間で雪辱を期す山中博生(4年)の集大成
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/12/20 10:01
全日本大学駅伝2区で東京国際大学のアモス・ベットを追う山中(右)。区間4位と好走した
いずれの駅伝でも他校のエース級を相手に臆することなく力を示しているだけに、今回の箱根駅伝でも2区での起用が有力だ。
前回は後半に失速したものの、中野孝行監督は「山中が2区で(序盤から)突っ込めるのが分かったのは収穫。これは来年に生きてくる」と評価し、早い段階で山中の2区起用を示唆していた。山中自身ももちろんそのつもりだ。
「中野監督はもう1年あることを見越して、前回も2区に挑戦させてくれたのだと思います。そういう意味でも今年は“勝負”の年になる。箱根駅伝の2区は経験者の僕が走らないといけない。そこは譲れません」
2度目の2区で雪辱を果たすために、春先から努力を重ねてきた。
「4年生になって、陸上競技に向き合う時間が今までで一番多くなりました。箱根駅伝の2区は23kmとハーフマラソン以上の距離があるので、そこを意識して一つひとつ考えて練習に取り組み、走る距離を増やしたりしてきました。前回は“攻めた走り”をしたので、今回はその経験をうまく利用しながらしっかりと考えたレースをして、後半もガツンと勝負できるようにしたいです」
ターゲットタイムには1時間6分台を掲げる。前回からは1分10秒以上縮めなければならないが、昨季からの成長を考えれば十分に手が届く目標だ。
“叩き上げチーム”の象徴として
山中は今や、チームメイトからも指揮官からも絶大な信頼を寄せられるチームの大黒柱だ。だが下級生の頃はケガが多く、1年時は駅伝のメンバー選考にも絡めなかった。
「1年生の時は走れていなかったので、今の自分は全く想像できていませんでした。4年間、時間が過ぎていくのを待つだけかなと思っていましたから」
山中は1年目をそう振り返る。中野監督もルーキーイヤーの山中には大きな期待感を抱いていなかった。
「ご飯はたくさん食べられないし、線が細かった。4年間かけて頑張って強くなってくれればいいと思っていました」
山中はそんな指揮官の想像を超える成長曲線を描いてきた。「叩き上げのチーム」と称される帝京大を象徴するような選手なのだ。こういう選手がいる時の帝京大は強い。
「過去最強の帝京」を目指してきた今季は、箱根駅伝での目標を過去最高順位、つまり3位以内に掲げる。高い目標を掲げたからこそ、山中もチームも1年で長足の成長を遂げた。
「ここまで来たら、上を目指していこうと思います」
簡単なことではないのは重々承知している。それでも目標を下方修正することはせず、山中と帝京大は集大成のレースに挑む。