第101回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER
〈中央大学〉溜池一太(3年)を今季の快進撃に導いた“アメリカでの衝撃”とレースコントロール術
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2024/12/16 10:00
11月の全日本大学駅伝で、区間20位ながら卓越したペースコントロール術を披露した溜池
好記録を出したことで、溜池の視線は箱根駅伝を経由して世界へと向いていった。2025年は箱根駅伝で中大のエースとして走って結果を残し、9月に開かれる東京2025世界陸上競技選手権の代表になることを、溜池は目標として掲げていた。練習にも自然と熱が入る。
ところが──。
9月、溜池に異変が起きる。コンディション不良によって戦線離脱せざるを得なくなり、10月19日に行われた箱根駅伝予選会は欠場となった。藤原正和監督は「ハーフマラソンで、溜池の実力を確かめたかったのですが……」と残念がったが、当の溜池はケガをしたことも大きな学習になったと振り返る。
「夏合宿では、月間1,000km走ることを目標としていました。でも実際には、今の自分にとってその距離は負荷が大きすぎたようです。最適な月間走行距離は900kmを少し上回るくらいでしょうか。それを把握できただけでもよかったと思いますし、将来的には身体の成長によって、距離が延びていくと期待しています」
10月に入って練習を再開できるようになり、11月の全日本大学駅伝への出場が決まった。溜池は1区を任された。
「本来、走る予定はなかったんですが、チーム事情もあって走ることになりました」
狙いはハッキリしていた。スローペースに持ち込むことだ。
レース展開をコントロールする能力
「集団の先頭に立つことで、他のランナーが自分のことを意識したと思います。それをうまく利用させてもらったといったら失礼になるかもしれませんが、自分が目立つ位置で走ることで牽制し合う形となり、スローペースに持ち込むことができました。中継点の手前まで団子状態で、結果的にあまり差がつかない展開となり、自分の仕事はできたかと思います。実はラストスパートで力を発揮する練習はしていなかったので、思惑通りの展開でした」
言葉どおりのスマートな走りだった。自分が主導権を握り、混戦に持ち込むことに成功したのだ。溜池は区間20位だったものの、先頭との差は13秒。自分の「格」を利用し、最大限の効果を生んだといえる。
「全日本大学駅伝では、現状の力を考えてのレース展開でした。でも、箱根駅伝はそういうわけにはいきません。距離も長くなりますし、最高のコンディションで迎えたいと思っています」
藤原監督は「練習が順調に積めれば、溜池は2区に使います」と明言している。溜池もその期待に応えるべく、練習を積んでいる。
「予選会は自分が欠場したなかで、仲間が出場権を勝ち取ってくれました。今度は自分が恩返しをしなければならない番です」