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「監督、ちょっといいですか?」阪神・大竹耕太郎がたった一度だけ岡田彰布に話しかけた日…最初の会話は「冷たい人なのかなというイメージでした」
text by
山口裕起(朝日新聞)Yuki Yamaguchi
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/12/16 17:04
岡田元監督と同じく早大出身の大竹耕太郎。岡田の卒業が1980年なのに対し、大竹は2018年の卒業
大竹の直球は140km前後。それでも多彩な変化球を操り、打者との駆け引きで、打たせて取ることを真骨頂としていた。
監督の求める投手像こそ自身のめざすべき姿だった。くすぶっていた暗闇に光が差し込み、生きる道を再確認できた。
監督の言動から、もう一つ、わかったことがある。それは、「等身大でいい」ということ。
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「言い換えれば、普段通りに、普通にやることが大事だということ。それは監督の采配や雰囲気からも伝わってくるので、僕たちも気負わずに、等身大のままの自分を出せばいいんだ、と思えたんです」
言葉はないけど「任せたぞ」の信頼
移籍1年目の2023年は開幕から先発ローテーションをつかみ、いきなり6連勝と好スタートを切った。「小学生のころに壁当てで鍛えた」という抜群の制球力と緩急を織り交ぜた投球術は、首脳陣やチームメートらの信頼を得るには十分だった。熱狂的な阪神ファンもうならせた。
シーズンに入っても、監督との会話はほとんどなかった。だが、起用法を通して伝わってくるものがあった。
「言葉はないけど、『任せたぞ』と信頼してくれているのを感じるんです。だからこそ、それに応えようと。責任感も出てきました」
たまに話しかけられる時は、ボソッとひと言。大竹は自他ともに認める雨男。登板日が降雨中止になったとき、「よう雨が降るな」と笑われた。「はい。(梅雨の)6月生まれなので」と切り返してみせた。
「監督ちょっといいですか?」
ただ、この2年間で一度だけ、大竹から監督へ話しかけたことがある。
'23年の夏、開幕から6連勝した後に勝てない試合が続いた時期だ。初球を痛打される場面が目立っていた。一般的には、試合直後に、監督やコーチから反省点や課題を突きつけられるものだが、阪神にはそれがなかった。
「どんなに打たれてもダメ出しはほとんどなかった。だから、次に向けて自分で考えて能動的にやる。それはすごく大事なことだけど、いろいろと考えていく中で行き詰まってしまった」
甲子園球場での試合前の練習中に、センターの定位置付近で打撃練習を見つめていた監督のもとへ歩み寄った。「監督ちょっといいですか?」と声をかけ、率直な思いをぶつけた。「どういうメンタルで投げるべきでしょうか。客観的にベンチから見ていてどう感じていますか」。
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