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「監督、ちょっといいですか?」大竹耕太郎がたった一度だけ、岡田彰布に話しかけた日《2年で変化した監督イメージ》【虎戦士インタビュー】
2024/12/08
福岡でくすぶっていた左腕の野球人生を変えたもの。それは、2年前に新たに設けられた「現役ドラフト」と、時を同じくして甲子園に再臨した恩師との出会いだ。仏頂面に隠された優しさを感じた2年間を振り返る。(原題:[大先輩への感謝]大竹耕太郎「さりげないけど、見てくれていた」)
秋が深まっても、心の中のモヤモヤはぬぐえないでいた。
11月中旬の昼下がり。阪神タイガースの大竹耕太郎は、行きつけの喫茶店で紅茶をすすると、どこか寂しそうな表情でつぶやいた。「あいさつができずに終わってしまった。どこかのタイミングで、きちんとあいさつがしたいんです」。
10月13日、チームはCSでDeNAに連敗し、今季の戦いが終わった。先発予定だった第3戦に向けて準備をしていた29歳の左腕も、この瞬間に、阪神での2年目のシーズンが幕を閉じた。
試合後のロッカールーム。選手、コーチらが集まる中、岡田彰布監督だけは最後まで姿を現さなかった。すでに今季限りでの退任が発表されていた。大竹は感謝の気持ちを伝えたかったが、それができなかった。その日を最後に、会えないまま時間が過ぎていった。
最初の会話は、鮮明に覚えている。2年前の冬、12月9日だった。この日、プロ野球界で初めて現役ドラフト会議が開かれ、ソフトバンクに所属していた大竹は阪神に移籍することが決まった。すぐに関係者から岡田監督の連絡先を教えてもらい、電話をかけた。早稲田大野球部の先輩だが、面識はなかった。「大竹です。よろしくお願いします」。そう挨拶をすると、「おう、頑張れよ」とだけ返ってきた。わずか数十秒のやり取り。とくに会話が弾むこともなかった。「あいさつ程度でしたが、話した感じは厳しい人、冷たい人なのかなというイメージでした」と笑いながら振り返る。
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photograph by Kiichi Matsumoto