NumberPREMIER ExBACK NUMBER
「盗塁は数やないよ」最後の巨人阪神戦でみせた岡田彰布“未完の神采配”とは…コーチが明かす舞台裏「監督は勝負をかけられたのだと…」
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2024/12/17 17:00
首位攻防戦を前に巨人の阿部監督(右)と握手する岡田監督
「盗塁は数やないよ。いかに効果的に盗塁できるか。場面を見極めるのが大事」
岡田が口癖のように伝えてきたことだ。日本一に導いた昨季はリーグ最多のチーム79盗塁だったが、2022年の110盗塁から減らした。それでも頂点に立った。
この2年間で岡田野球はコーチや選手に浸透していた。この日、7回裏に入る前、筒井は代走要員の植田と熊谷敬宥、島田海吏をベンチ裏に呼び、こう伝えた。
ADVERTISEMENT
「もしかしたら必殺の、究極の場面が来る可能性がある。準備だけはしておいてくれ」
出番を告げられた選手が慌てないように、筒井は試合の流れから岡田の起用パターンを予測していたのだ。
「あうんの呼吸」で生まれた瀬戸際の盗塁
植田は筒井の指示を聞くと、いつものようにベンチ裏の通路で体を動かしはじめた。盗塁失敗の少なさが売りで、今季ここまで3盗塁の彼もまた岡田と接する日々で、自らの出番を読めるようになっていた。
9回。巨人は投手を代え、大勢がコールされた。すると、植田はまだ代走起用を伝えられていないのに、リュックからノートを取り出した。投手の特徴を書きとめたメモである。すでに頭に入っているが、念のために確認する。そうやって気持ちを落ち着かせるのが普段から行う儀式である。
佐藤輝明が凡退し、前川右京が打席に向かうと、初めて植田は内野守備走塁コーチの馬場敏史から、塁に出たら出番だと声をかけられた。すべてが想定通りだった。
「緊張というより、勝たないといけないという気持ちでした。『アウトになったら試合が終わってしまう』という考えではなく、アウトにならないタイミングでスタートを切ることだけを考えていました」
植田が冷静に振り返るように、瀬戸際で決めた盗塁は岡田とその意図を酌んだコーチ、選手の「あうんの呼吸」から生まれた。
ゲームを通じて際立った、岡田にしかできない選択
このシーンだけではない。その前にも、岡田はいくつか流れを引き寄せるための采配を振っている。その特異さが際立ったのは両チーム無得点で迎えた7回表である。
【続きを読む】サブスク「NumberPREMIER」内の「監督は勝負をかけたのだと思いました」監督として最後の巨人戦、岡田彰布“未完の神采配”とは何か?《2人のコーチが舞台裏を明かす》で、こちらの記事の全文をお読みいただけます。