第101回箱根駅伝(2025)BACK NUMBER
「1月3日を終えて、私たちは年が明ける」〈第101回箱根駅伝〉次呂久直子幹事長(東海大学3年)が裏方として走り続けられる理由
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byShiro Miyake
posted2024/11/27 10:00
3年生で異例の幹事長抜擢となった次呂久直子さん(東海大学)
本大会前の最大の山場は、箱根駅伝予選会だ。
前回は第100回の記念大会で全国の大学に出場の門戸が開かれ、全23校と通常よりも3校増えた。その時、運営面で改善されたのが選手の待機所だ。それまで大学がそれぞれ待機所を設けていたが、運営側で柵に囲まれた待機所を新たに作り、一般客との境界をきちんと設けることで選手にとって過ごしやすい環境を整えた。それが大学関係者や選手に好評だった。
今回、次呂久さんは、さらに待機所の環境をアップデートした。
「昨年は、待機テントを横並びにして数列置く感じだったんですけど、それだとうしろの大学からステージが見えないですし、声もあまりよく聞こえなくてかわいそうな感じだったんです。今回は、発表のステージがどの大学の待機テントからも見えるように配列しました。みんな、ステージの方向を向いて、その瞬間を待てるのでよかったですし、報道の方からもどこにどの大学がいるのかが見つけやすいからありがたいという意見をいただいたので、すごくうれしかったです」
踏襲だけでなく、改善も進める
また、フィニッシュした後の選手の動線も改善した。昨年はフィニッシュした後、少し歩いて待機所に行かないといけなかったが。フィニッシュからすぐに待機テントに戻れる動線を作った。
前例をただ踏襲するのではなく、改善すべき点があればすぐに取り掛かる。これは、次呂久さんの幹事長としてのポリシーであり、後輩たちに伝えてきたことでもあった。
「後輩たちには、その担当になった時、これはなぜこうなったのか、と少しでも疑問に思ったら確認してほしい。それをそのままにして大会当日に大学から聞かれた時、説明できないということがないようにと話をしています。また、受け継がれてきた伝統を引き継ぐところは引き継いで、変えるべきところは時代に合わせて変えていく。毎年、問題がなかったからそのままじゃなくて、選手がより競技に集中できる環境であったり、お客さんが来てよかったと思えるような競技会にできるように、いろんなところを改善しながら進めていこうという話をしています」
予選会、幹事長には結果発表という大きな任務がある。今年は、例年以上に人が多く、ステージの周りは、人で埋め尽くされていた。声を張り、1位から大学の名前を読み上げていく。10位、順天堂大学の名前が読み上げられると、待機所の一部からは悲痛な声が漏れた。次呂久さんの母校である東海大学も14位になり、予選会突破を果たせなかった。
「東海大は、フィニッシュ直前にアクシデントが起きたのでいろいろ取り上げられましたけど、他の大学もエースが途中棄権したり、留学生があまり走れない中でも予選を通過していました。条件はみんな同じですし、東海大だけがというわけではないので。ただ、やはり複雑な気持ちがありました。自分が幹事長になった時にまさか自分の大学が箱根駅伝に出ないことになるとは思っていなかったので……」