第101回箱根駅伝(2025)BACK NUMBER
「チームをないがしろにするつもりは少しもない」日本人学生記録を持つ、最速世代の箱根駅伝への執念と覚悟
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byYuki Suenaga
posted2024/11/20 10:00
第56回全日本大学駅伝で7区区間賞の走りを見せた駒澤大学・篠原倖太朗(4年)
前回の箱根駅伝で2区3位と好走した國學院大の平林は、勢いそのままに、今年2月の大阪マラソンで2時間6分18秒の日本学生記録および初マラソン日本最高記録を打ち立てて優勝した。実業団勢や世界大会を経験している海外招待選手にも勝利し、一躍日本マラソン界のホープとなった。
前回の箱根駅伝の後に沖縄・宮古島でマラソンに向けた合宿を実施したものの、マラソン練習の定番といえる40km走は1回行ったのみ。「特段、マラソン練習みたいな感じではなかったですね」と言う。もっともマラソン挑戦を決意した2年の夏から相当な距離を走り込んできたからでもあったが、箱根駅伝の延長線上にマラソン挑戦があった。
最大の目標はやはり箱根駅伝の総合優勝
平林にとっては4年後のロサンゼルス五輪が大きな目標だが、来年に開催が迫った東京世界選手権もマラソンでの出場を目指している。その選考レースが控えるなか、今季の駅伝シーズンを迎えた。
しかしながら、平林は「何よりも今季の学生三大駅伝が大事」と言うように、チームでの栄光にこだわってきた。そして、その通りに、出雲駅伝、全日本大学駅伝とチームで勝利を収めてきた。最大の目標はやはり箱根駅伝の総合優勝だ。
「やっぱり大学生ですから、箱根駅伝で総合優勝するのが夢です」
きっぱりとそう言い切る。
たとえ日本マラソン界のホープと呼ばれようと、その目標がぶれることはなかった。箱根駅伝総合優勝という悲願は学生のうちにしか成し遂げることができないのだから、最上級生の平林にとっては今度がラストチャンス。それだけに、懸ける思いは大きい。
今回は出場が叶わなかったが、東農大の前田も、日本人学生新記録を打ち立てた5月の日本選手権10000mのレース後にこんなことを話していた。
「このチームがあって今の自分があると思っているので、チームをないがしろにするつもりは少しもありません。(1年間のうち)前半は全日本選考会、後半は箱根予選会と本大会に焦点を当ててやっていこうと思っています。もちろん世界の舞台で戦いたいと思っていますが、チームのことも本気でやります」
これほどの結果を個人で残しているのだから、彼らが世界に向かうには、もちろん違う選択肢もあったはずだ。それでも彼らは箱根駅伝を経由する道を選んだ。だからこそ、全力をぶつける覚悟を持ってその舞台に臨む。