第101回箱根駅伝(2025)BACK NUMBER
「チームをないがしろにするつもりは少しもない」日本人学生記録を持つ、最速世代の箱根駅伝への執念と覚悟
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byYuki Suenaga
posted2024/11/20 10:00
第56回全日本大学駅伝で7区区間賞の走りを見せた駒澤大学・篠原倖太朗(4年)
例えば、佐藤の場合、彼の持ち味のスピードを生かすには、前半が下り基調の3区が適していたといえる。篠原はどの区間でも器用にこなせそうだが、前回はライバル校に先手を取るために1区を任されると、区間賞の走りで見事にその役割を果たした。
もっとも、駒大は、田澤廉、鈴木芽吹と歴代のエースたちが2区を担ってきたからでもあったが、今回は、篠原が初めて2区を担うことになるだろうか。
前述の通り、駒大からは篠原と佐藤の2人が日本人学生記録保持者となっている。彼らは駒大のなかでも、大八木弘明総監督が率いる“Ggoat”(ジーゴート)というプロジェクトに所属し、ハイレベルな環境に身を置いて、OBの田澤や鈴木らと練習を共にしている。
この“Ggoat”は、かつては“Sチーム”とも“大八木塾”とも称されていたが、今年から現名称となりプロジェクトが本格始動した。日本人選手が長距離種目において世界のトップを獲ることを目標としており、篠原と佐藤が学生の枠を超えた活躍を見せているのは、まさにこのプロジェクトの賜物といえる。
主将としての自覚と覚悟
篠原には駒大の主将という顔もある。この夏、Ggoatはアメリカ・パークシティで合宿を行い、佐藤は別行動でアメリカ・ボルダーでの武者修行を敢行した。その一方で、篠原は主将としてチームに残る決断をした。
「夏合宿は、自分だけじゃなくて、チームのこともやらないといけない。少しレベルを落としてでも、チームを引っ張るようにしたい。足りない部分は自分ひとりで補えばいいので、チームを第一に考えてやっていきたい」
7月に篠原はこんなことを口にしていた。
今季の前半戦、駒大は苦戦が続いており、主将として危機感を覚えていたのだろう。個人としてのレベルアップのために海外遠征に行きたかったはずだが、この夏はチームの練習を引っ張った。その甲斐はあった。
篠原の背中を追った後輩たちがめきめきと力を付け、前半シーズンに不振だったのが嘘のように、秋になって駒大は好調だ。出雲駅伝と全日本大学駅伝は、ケガの影響で佐藤が欠場したのにもかかわらず、共に2位と好成績を残した。もちろん優勝を逃した悔しさは残る。その雪辱は箱根駅伝で果たすしかない。
大一番を前に、篠原は11月23日の八王子ロングディスタンスで10000mの学生記録更新を目指す。新たな称号を手にし、さらにレベルアップした姿を、最後の箱根路で見せるつもりだ。