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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「涙は箱根に取っておく」三冠王手の國學院大・前田康弘監督、箱根駅伝初制覇への秘策とは…“鬼門”の山上り5区にエース平林清澄投入はあるか?
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byYuki Suenaga
posted2024/11/08 11:13
全日本大学駅伝では7区で青学大・太田蒼生と熾烈な争いを繰り広げた平林清澄(4年)。箱根での役割はどうなるのか
「小学生の頃に最初に憧れたのは、“山の神”と言われた東洋大の柏原竜二さん。中学生になっても、5区で青山学院大の神野大地さんが走るのを見て、かっこいいなと思いました。山は抜きつ抜かれつのドラマがある。憧れは持っていましたね。往路のフィニッシュテープを切れるのもいいなって」
区間配置に考えを巡らせる前田監督も選択肢の一つとしては、頭にあるようだ。フィニッシュ地点の伊勢神宮から閉会式の会場に向かう道すがら、平林の5区起用についてポツリとつぶやいた。
「戦略としてはあり。もしも(往路の)締めで使うなら5区」
仮に平林を5区に回しても、2区を担えるタレントはいる。次代を担うエース候補の上原は出雲路の5区で区間賞、伊勢路ではアンカーで青山学院大を捉えて優勝のフィニッシュテープを切った。競り合いに強く、起伏のあるコースも得意である。学年リーダーを務める責任感もあり、適性は十分だろう。
読めない前田監督の秘策は…
策士のプランはなかなか読めない。過去に大胆な区間位置で成功を収めた実績もある。2019年の95回大会では、メディアの前で2区起用を濃厚と匂わせていた浦野雄平(現富士通)を5区に抜擢。すると、そのエースが山で区間賞に輝き、7年ぶりにシード権を獲得した。後日、実は前々から準備していたことを明かしている。そして、翌年の96回大会でも浦野を同区間に投入。大黒柱が山上りで区間3位と好走し、初の表彰台となる総合3位に。そのときに掲げてきたスローガンも、今年度と同じ『歴史を変える挑戦』だった。はたして、ただの偶然なのか――。
もちろん、3年連続して平林を2区で真っ向勝負させる可能性も高い。指揮官は青山学院大の黒田朝日、駒澤大の篠原とのエース対決も見据えている。
「2区はバチバチでしょうね。先頭争いをしたいです」
学生三大駅伝を締めくくる舞台へのイメージは、膨らむばかり。三つ巴の勝負になる予感が漂うなか、「全日本のチャンピオンチームとして堂々と臨みます」と胸を張る。
「これで箱根も駒大とのアンカー勝負になったら、面白くないですか? 歴史に残る駅伝の年にしたいですね」
今季、口癖のように使う“わくわく”が止まらないようだった。