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甲子園の風BACK NUMBER
「『藤原佑、指名漏れ』はイヤだなあ」ドラフト当日、大社・石飛監督が明かした“本音”…じつは伏線あった“藤原佑の独立リーグ行き”、決断のウラ側
posted2024/11/08 11:02
text by
井上幸太Kota Inoue
photograph by
Kota Inoue
指名漏れ直後…石飛監督の言葉
最初に投げかけられた質問は、「ドラフトが終わった今の心境」だった。大社の監督、石飛文太が声のトーンを落とさずに、言葉を紡ぐ。
「まず、志望届を出すところまでに至ったのが、もう素晴らしいなと。NPBの球団に視察に来ていただいたりとか、そういうところまで来たのが、僕はうれしくて。入学時はプロが見えるとは思わなかった選手ですから。本当に高校生の可能性というのは無限大だと思います」
プロ野球界には、「生き残るには、総合力よりも圧倒的な一芸が必要」という格言がある。整っているが小さい三角形よりも、一見いびつでも何かが突き抜けている方が、猛者が集う世界を生き抜ける。的を射ているのだろうが、ことプロ入りに目を向けると、当てはまらない部分もある。藤原佑について、こんな声を聞いたことがあった。
スカウトの藤原評「足はプロレベルだが…」
「足は間違いなくプロで生きていけるレベル。総合的に見ると育成評価ですけど、走力だけを見れば支配下でだって推せます。でも、スローイングがね……。上司と同席で甲子園の試合を視察したときも安定していなくて。こうなると上を納得させるのが難しいんですよね」
藤原を追いながら、調査書を出すに至らなかったスカウトの弁だ。
当然ながら、プロのスカウト部も組織であり、現場を回るスカウトの一存で指名選手は決まらない。地区をまたいでのクロスチェックや、スカウト部の管理職同席での視察で一定の評価を得て初めて、ドラフトの机上に上がる。
決定権のある上司に悪い印象を与えないためにも、必要になってくるのが、ある程度の総合力だ。上司が同席した際に、不安材料をさらけ出してしまうと、当然印象はよくない。上司が首を縦に振らなければ、担当の熱意は水泡に帰す。残酷だが、それが組織なのである。
無論、「ドラフトは生き物」と言われるように、各球団の動きによって、刻々と状況が変化する。評価されながらも、その流れの中で見送られた可能性もある。それでも、藤原のプロ入りが実らなかった要因について、指導してきた石飛の見解を聞いておきたかった。