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野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
「ここまで来たら横浜の日本シリーズを見ながら死にたいな」ファン歴62年…“余命4カ月”森永卓郎(67歳)が唱える「三浦大輔監督=名将説」
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph by(L)BUNGEISHUNJU、(R)JIJI PRESS
posted2024/10/11 17:01
長年ベイスターズファンを続け、昨年すい臓がんで「余命4カ月」と宣告された森永卓郎さん。辛口批評が多い森永さんが三浦大輔監督を評価するワケは…?
――三浦大輔監督、4年で3度のAクラス。されど一度も優勝はなし。これをどう評価されますか。
森永 名将ですよ。私の周りにも『監督が三浦大輔以外だったらもっと勝てたんじゃないか』とか『監督が三浦大輔のうちはダメなんじゃないか』という人がそこそこいるんですけどね。私は三浦大輔こそ、名将中の名将だと思っているんですよ。
――なぜ、そう思われるのですか?
森永 このベイスターズで3年連続Aクラスになった監督は、優勝したゴンちゃん(権藤博)以来のことなんですね。ただ、ゴンちゃんは自由主義者のようで、ものすごい怖さがあった。私もtvkでインタビューした時に『権藤監督はファームの選手も見ているんですか?』とちょっと聞いただけで『何のために背番号がついていると思うんだ!』と怒鳴りつけられたことがあるんですよ。そんな調子の強いリーダーシップで選手をがんがん鼓舞して引っ張っていったから、あの時は強かったんです。だけど私の中では権藤さんもベイスターズ的ではないです。
――確かに三原脩の1960年、権藤博の1998年と、2度の優勝はいずれも球団の歴史から見れば明らかに奇妙な年でした。
森永 だけど一番気に喰わなかったのは森(祇晶)監督の時代ですよ。なんかもう品行方正で、ガッチガチに管理してね。それだともう選手が萎縮しちゃってベイスターズの野球をつまんなくしてしまったでしょう。その点、今は選手がイキイキと野球をやっているじゃないですか。僕は三浦大輔が単純に生え抜きで最後までベイスターズを貫いたから贔屓目で名将と言っているわけじゃないんですよ。今年の数字を見てくださいよ。
三浦監督が優れているのは「細かい気遣いができる」
――今年のベイスターズはチーム打率、得点、盗塁1位、本塁打2位。一方でチーム防御率、失点が5位、失策数トップと極端に偏った面白いチームです。
森永 広島が何故か終盤に落ちてくるという幸運はあったにせよですね、三浦大輔が、これだけボロッちい投手陣でも、うまくやりくりして、しかも山本祐大や梶原(昂希)、蝦名(達夫)、森(敬斗)なんて若手を育て、戸柱(恭孝)まで復活させながらここまで来たというのはやはり評価されて然るべきです。これで、山﨑康晃が復活して、バウアーと今永のどっちかでもいたらぶっちぎりの優勝だったでしょう。
――近年のベイスターズ、かつてないほど優勝が近づいてきているような気はしています。
森永 監督として番長が最も優れているところは、あらゆるところに細かい気遣いができるところですよ。昔の話ですが、私がニッポン放送の朝の番組で、暴言を吐いて降板させられたことがあったんですけどね。その最後の生放送の出演が終わって、局の誰の見送りもない中で一人で帰ろうとすると、玄関口に球団職員の方がいて「三浦さんに頼まれました」と、ボールを渡してくれたんです。そこには「お疲れ様でした」とメッセージが入っていてね。
感激しましたよ。そういう心遣いをね、僕だけじゃなくいろんな人にやってきた人です。なにより、あれだけ弱かったベイスターズという球団や、選手、そしてファンにものすごい愛情を持っていて、自らが先頭に立って、みんなに愛される球団を作ろうとしてきた人じゃない。リーダーとしても理想的な人間じゃないでしょうか。