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「強豪の推薦より一般受験」「単身ケニアに行ってAO入試」彼らはなぜあえて“慶應から箱根駅伝”をめざすのか…予選会直前、慶應競走部の青春 

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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photograph byYuki Suenaga

posted2024/10/17 11:01

「強豪の推薦より一般受験」「単身ケニアに行ってAO入試」彼らはなぜあえて“慶應から箱根駅伝”をめざすのか…予選会直前、慶應競走部の青春<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

30年以上ぶりの箱根をめざす慶應。寡黙なエースと破天荒な秘密兵器の思いとは

「競技に対してではなく、競技者としての姿勢について言われたのですが、自分の考え方や意識を変えていかないといけないなと思いました。ここが僕にとってはターニングポイントになりました」

 大学2年の1月からシンプルに自分の状態を確認しながら練習を積み重ねていった。大学3年の4月、6大学対校戦5000mで13分54秒42の塾記録と自己ベストをマークすると、6日後の世田谷記録会10000mでも28分47秒04で自己ベスト、塾記録を更新した。

「去年はけっこう距離を踏んできました。僕は高校時代、中距離だったのでスピードはあるけど長距離のべースが無いなと思っていました。そのために朝練前にアップがてら2、3キロ走り、合宿中のジョグも12キロを15キロにするなど夏は、月間1000キロはいっていたと思います。予選会の公園内はきついコースなので、最低キロ3分の土台をつくるのには十分な練習が出来たと思っています」

 その秋の予選会では、62分30秒でチーム内トップ、24位でチームを牽引した。

自分よりBチームのほうが伸び代がある

 今年の予選会に向けて、木村自身は走れる自信を得たが、チーム全体で考えると「甘さ」が感じられたという。Bチームの選手のレベルアップが不可欠だが、より力を上げていくために、木村はあえて冷静な視線で見ていた。

「夏合宿、Bチームの選手がけっこう練習が出来ていたので『いけるぞ』と盛り上がっていたんです。でも、僕はポイントができただけで、『まだまだだろ』って舞い上がらないように釘を刺していました。予選会で僕が1分稼ぐのはキツキツだけど、Bチームのメンバーは伸び代があるので1分を稼ぎやすいんですよ。そうならないと予選会は突破できない。そのために自分に厳しく、他の選手にも厳しくしてきました」

 トラックシーズンは、ほとんどレースに出場しなかったので、今回の予選会が久しぶりのレースになり、4年間の集大成の場になる。「当日は緊張すると思います」と語るが、その表情には確かな自信が感じられる。

【次ページ】 秘密兵器の2年生

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