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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「強豪の推薦より一般受験」「単身ケニアに行ってAO入試」彼らはなぜあえて“慶應から箱根駅伝”をめざすのか…予選会直前、慶應競走部の青春
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byYuki Suenaga
posted2024/10/17 11:01
30年以上ぶりの箱根をめざす慶應。寡黙なエースと破天荒な秘密兵器の思いとは
「タイムは61分45秒に設定していますが、どんなレース展開になっても日本人3番以内、最低でも一桁の順位でいきたいとイメージしています。僕がここまで成長できたのは、慶應の競走部に入ってOBの支援などを含めた環境があったからこそだと思うので、予選会で少しでも恩返しできるような走りをしたいと思っています」
年1回のハーフで慶應を引っ張る快走を実現できるか。
秘密兵器の2年生
慶應大学には、「秘密兵器」がいる。
成沢翔英(2年)は、そう呼ばれるのに相応しい破天荒な選手だ。箱根の強豪校への入学が決まっていたが、県駅伝で大腿骨を疲労骨折して入院している時、2次の手続きとなる書類の提出と学費の振り込みを忘れてしまった。翌年の入学にするか、どうしようか考えていると、内部進学できる大学の陸上部から「うちに来い」と説得された。
「自分は付属高校だったので上には行けるんですけど、それじゃおもしろくない。自分のいいところは『そういったか』という、人と違う道をいくところだけど、進路をどうしようと考えていた時、『ビリギャル』を見たんです。『おもしろいじゃん』と思い、高3の1月に慶應に行こうと決めました」
進路を心配していた担任に「慶應に行く」と伝えると「おまえ、何、言っているんだ」と怒られた。あの映画のワンシーンのようだが、調べると慶應には9月入学があった。入試は面接と論文だけだった。
1人でケニアに行ったら面白いんじゃないか
「論文を書く際、陸上でぶっ飛んでいて、高卒で誰もやったことがないことって何だろうって考えた時、ケニアに1人で行ったらおもしろくねって思ったんです。テーマを『ケニア人の足の速さ』にして、インソールの会社に足の裏を計る測定器を借りて、ケニアに飛びました。現地の学校とかに突撃で行き、計らせてくれる人に飴をあげていたら『飴を配る中国人が現われた』って噂になりました(笑)」
その狙いがハマり、慶應大学に合格した。当初は起業し、1500mをメインに中距離で陸上をつづけようと考えていた。箱根に興味はなかったが入学前、「夏に菅平で合宿をしているので、見るだけでもいいので来てほしい」と保科コーチに言われた。