「いやですって言いました。箱根には出られないし、なんで行かないといけないんですかって。でも、地元が上田で菅平が近いんですよ。親にも『見るだけ見て来い』と言われたので、見に行ったんです。そこで気持ちが変わりました」

　成沢の目に入ったのは、チームメイトを怒鳴りつつも時には鼓舞し、チームを引っ張る田島公太郎主将の姿だった。

田島さんのためなら

「ビックリしましたね。こんなにチームのためにやっている人っているんだって。マネージャーに聞いたら『1年時に箱根を走っているが、今回はチームとして出ることを目標にしている』と言われて。その時、誰かのためにここまで頑張れるのは、すごい。この人の元でならやってもいいかなって思って長距離をやることにしました」

田島（左）は98回大会で学連選抜として復路7区を走っている　©JIJI PRESS

　意外と浪花節な成沢だが当初、田島には嫌われていた。金髪で自分勝手な行動でチームの輪を乱すので、「こいつ、なんなんだよ」と思われていた。だが、昨年11月の日体大記録会10000mで29分06秒26、今年のホクレンディスタンス網走大会の5000mでは13分55秒81をマークするなど、結果を出していくと徐々に話をするようになった。

「田島さんは、学連枠で箱根を走って燃え尽きてしまい、チームでは箱根は難しいので2年の時にやめようと思ったそうです。でも、同期の木村さんや安倍（立矩）さんが一緒に頑張ってくれたからやめなかった。そこで踏み止まれるのは凄いなって思いました。頭の中には暴走する成沢と田島さんに恋する成沢がいるんですが、今は予選会前なので田島さんにラブモードで、しっかり走ろうと思っています（笑）」

「陸上界の異端児をめざす」と笑う成沢　©Yuki Suenaga

　箱根の予選会は、高2時の都大路に出た時と似ているという。

【次ページ】　慶應から自分みたいな変な奴が…