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「全プロ野球選手にとって憧れの舞台」杉谷拳士のSMBC日本シリーズへの想い。そして、社長に転身してからのお金事情を赤裸々に語った

posted2024/10/18 11:00

 
「全プロ野球選手にとって憧れの舞台」杉谷拳士のSMBC日本シリーズへの想い。そして、社長に転身してからのお金事情を赤裸々に語った<Number Web> photograph by Shiro Miyake

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福田剛

福田剛Tsuyoshi Fukuda

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Shiro Miyake

 10月26日、SMBC 日本シリーズ 2024がいよいよ幕を開ける。

 日本ハムファイターズで14年間プレーした杉谷拳士が、初めて日本シリーズに出場したのは2012年。対戦相手は2位中日に10.5ゲームと圧倒的な大差でリーグ優勝を果たした読売ジャイアンツだった。球界の盟主との日本一を懸けたシリーズの第1戦に杉谷は2番セカンドで出場した。

「日本シリーズどころか、リーグ優勝も初めての経験だったので、試合が始まって地に足がついてないというか、ふわふわした気分で打席に立ったのを覚えています。先発がこの年15勝を挙げ最多勝を獲得したジャイアンツのエースだった内海(哲也)さんだったので、ものすごく緊張しました」

 夢の舞台の初打席、その結果はまさかのデッドボールだった。

「何とか出塁はできたので、これはラッキーだなと思いながら、一塁に向かいました」

 このシリーズは5試合に出場したものの、9打数2安打とジャイアンツの投手陣に苦しめられた。チームも2勝4敗で日本一を逃した。

「日本シリーズは、レギュラーシーズンともクライマックスシリーズとも全然違う。まったく別物でした。クライマックスは1度負けてもまた次の試合と切り替えられるんですけど、日本シリーズは一敗しただけで、ロッカーのなかがまるでシリーズが終わったような重い雰囲気になるんです。全選手がこれまでに味わったことのないプレッシャーを感じていました」

 2度目の日本シリーズはその4年後。2016年にセ・リーグを制覇した広島と対戦した。お互いにホームで勝ち星を挙げ3勝2敗で王手をかけたファイターズは、敵地マツダスタジアムでの第6戦を10-4で勝利。2006年以来10年ぶり3度目となる日本一に輝いた。その瞬間を杉谷は複雑な想いでベンチから眺めていた。

「前年にキャリアハイの成績を残して、2016年は僕にとっては勝負の年でした。それが4月にケガをしてしまって、約2カ月間離脱することになり、なんとかもう一度戻りたいという思いで、リハビリを頑張っていたんですけど、その間にポジションがなくなってしまった。日本一はすごく嬉しかったんですけど、シリーズ自体は1試合に出場しただけ。あまり出場する機会がなくてずっとベンチで後輩や先輩たちのプレーを見ていただけで終わってしまった。そういった意味では悔しい思い出が残る日本シリーズになりました」

 それでも「全プロ野球選手にとって憧れの舞台」と、日本シリーズへの想いを口にする。

「悔しい思いもたくさんしましたが、一度も出場できずに現役を終えるプロ野球選手もたくさんいるなか2度も出場させたもらったことは、改めてすごく貴重な経験だったと思います」

【次ページ】 杉谷拳士がSMBC 日本シリーズ 2024を予想

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