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プロ野球PRESSBACK NUMBER
日本ハム・清宮幸太郎の“覚醒”は「性格の良さあってこそ」恩師・荒木大輔氏が語る苦悩の日々と成長「村上宗隆と比較されても自分は自分と…」
posted2024/10/19 11:04
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph by
Hideki Sugiyama
「大好きなファンの皆さん、チームのみんなとまだ野球ができると思うと、本当に幸せだなと思います」
CSファーストステージ突破を決めた第3戦後のヒーローインタビューで、清宮幸太郎はそう口にして熱い涙を流した。ロッテに先勝を許しながら第2戦はサヨナラ勝ち、第3戦は逆転勝利という劇的展開で2連勝。ヒリヒリとした戦いの中でチームを牽引できる喜びが、その涙に表れていた。充実感に満ちた姿を目にした荒木氏は、感慨深い思いを抱いていたという。
待ちに待った“覚醒”
「日本ハムの“同期入団”というのもあるし、何より高校の後輩ですから。高校生だった頃から色々な会話を交わしていましたし、ここまで色々と苦労してきた姿も見てきました。その彼が結果を残してやっとチームの中でポジションを確立して、大舞台でああいう姿を見せている。やはり嬉しいですよ」
プロ7年目の今季、清宮は2月のキャンプイン前に左足首を負傷して二軍スタート。リハビリを経て戦列復帰した後も調子が上がらず、再びの二軍調整を余儀なくされた。しかし、6月11日に一軍昇格後は、打棒が一気に上向き、7月の月間打率は.383、8月は.320とついに“覚醒”。終盤戦でも勝負強いバッティングで何度もチームを勝利に導き、規定打席到達未満ながら打率.300、15本塁打でレギュラーシーズンを終えた。
「今までは、結果を残さなければいけない、と空回りしていた部分もあったと思いますが、今シーズンはどっしり落ち着いて自分のやりたいことをできているように見えます。一番の変化は、状況を見極めて自分は何をするべきか、しっかり理解した上でプレーしていること。ただ打てばいいというのではなく、こういう状況だったら繋いでいこうとか、試合展開やチーム全体を見ながら打席の中でしっかりと考えているのが分かります」
「彼は早実の頃から…」
印象に残った場面として荒木氏が挙げたのは、CSファーストステージ第2戦、延長10回の打席だ。2死から松本剛が四球を選び出塁し、一打サヨナラという場面で清宮はロッテ・澤村拓一からしぶとくセンター前ヒットを放った。
「澤村のスプリットに対して、体勢を崩されながらもバットに当てて、センター前に落とした。今までの清宮なら、ここで自分が決めたいと強引なバッティングになっていたと思いますが、繋いでいくという意識がああいう結果になったのだと思う。
もちろん、ホームランや長打に魅力があるバッターですから、そういう結果を残すのが理想です。でも、この場面でチームに何を求められているかをしっかり考えて形に残せたこと。これが彼の成長だと思います。でも元々、清宮は早実の頃からそういうことができるバッターだったんですよ」