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「LINEが120件きて…」高校野球“0勝なのに”会いたい人が殺到中の監督…何者? リアルな評判「距離感がバグってる」「季節ごとに収穫物を玄関に」
text by
樫本ゆきYuki Kashimoto
photograph byYuki Kashimoto
posted2024/09/11 11:02
加美農を率いる佐伯友也監督、37歳。なぜ全国の指導者は佐伯を訪ねるのか
そんな東北熱男会の実践編が、今年で7回目となる「東北交流試合」だ。小規模野球部と強豪校が手を取り合い、3月に宮城で交流試合をする。両チームの選手をミックスさせて対戦するなど、特別ルールを設けて実施。参加校は65校まで増えた。
2023年、西仙北の佐藤俊平監督と、十和田の神居恵悟監督(現秋田監督)は、泉松陵の監督から助っ人を借りて「秋田宮城連合」で交流試合に出場した。過疎や統廃合で部員増が望めない地区の両監督が采配し、花巻東Bチームに1点差の善戦をした。
佐藤監督はこの時の経験を生かし、この夏6校連合を率いて昨秋4強の秋田北鷹に3-4の好試合を見せる。交流試合に参加した1年後に連合チームから脱却し、今夏3年ぶりの単独チーム出場を果たした高校もある。メンバーたちが各地で成長を見せている。
佐伯監督は「同級生仲間で作る『62年会』という全国約60人のグループもあるのですが、神奈川に菅澤悠という市ケ尾の監督がいて、地元小学校とコラボして大谷グローブを使った野球教室をしているんですよ。1度でなく5回もやって、小学生が300人くらい参加したそうなんです。チームも2年連続で16強入りしたりして、頑張ってるんですよね」と誇らしげに話した。
「距離感がバグってる」佐伯の周囲評
東北熱男会の飲み会は「佐伯友也」というワードだけで、場が盛り上がる。
「いつも何か企んでいるような顔をしているよな」
「距離感がバグってて、実は最初ちょっと無理だった(笑)」
「怖いくらい、見返りをゼンゼン求めてこないよね」
「そして季節ごとに、加美農の収穫物を玄関の前に置いて帰る」
「腰が低そう~な物腰で来るくせに、やることは大胆なんだよね」
「でも嫁や子どもの名前を全部覚えてくれてて、普通に感動した」
東北熱男会や、東北交流試合、そして62年会。若手指導者たちのリーダー的存在であることは間違いない。初期メンバーの宮城工・冨樫誠悦監督はこんなことも言っていた。
「周りの人の心に火をつける点火剤みたいな存在ですね。弱みを強みに変えることができる男なんです。交流試合だって本当は対戦相手を決めるのにもの凄く気を遣うのに、いとも簡単に計画してしまうんですよ、アイツは」
佐伯監督の熱量に救われ、一歩前へ踏み出せた指導者も多い。全国に広がるこの波及効果は例えるならば「のれん分け」とか「株分け」のようなものだろうか? 佐伯監督が農業教員らしい比喩で話した。