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「LINEが120件きて…」高校野球“0勝なのに”会いたい人が殺到中の監督…何者? リアルな評判「距離感がバグってる」「季節ごとに収穫物を玄関に」
posted2024/09/11 11:02
text by
樫本ゆきYuki Kashimoto
photograph by
Yuki Kashimoto
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2年前の2022年8月、加美農の取り組みをNumberWebの記事が紹介すると、様々な反響が野球部に届いたそうだ。佐伯友也(ゆうや)監督が振り返る。
「自分のところに120件ものLINEが来て、いろんな人から『がんばってるね』と言われました。あの年は仙台育英が初優勝した年。そういうニュースの陰で、うちみたいなチームもあるよということを知ってもらえたことがうれしかったですね」
島根の指導者も、斎藤佑樹も訪れた…
島根は隠岐の島からも学校に電話があったそうだ。かつてのセンバツ出場校・隠岐高の渡部謙監督が「ぜひ佐伯監督に会って話を聞きたい」と、その秋に島根から来校し3日間、佐伯監督の活動を見学した。
翌年4月には、バーチャル高校野球の企画で斎藤佑樹さんが来校した。農業高校の密着取材として、大場龍之助主将(当時)と菅原文乃マネージャーが校内の牛舎や果樹園を案内し、インタビューを受けた。「コミュニケーションが上手だね」と斎藤さんから褒められると、大場主将の緊張していた顔が一気にほころんだ。
佐伯監督は「野球を通じたこういう人とのつながりは高校生に必要です。野球で人生が変わったり、人の縁が広がるんですよね。口コミやメディアから彼らの頑張りが広がってくれるといいですね」と望んだ。
伝播する“佐伯の熱量”
7年で部員を2人から26人に増やした(本連載の1回目参照)が、佐伯監督は約10年前から指導者のネットワークづくりにも力を入れていた。その最たる舞台は、東北の熱い指導者たちが集まる会、略して「東北熱男(あつお)会」。人脈がまだ乏しい監督同士が情報交換をしたり、練習試合のマッチングなど「強い東北」への戦略を語り合った。26歳だった佐伯監督もこのネットワークに助けられ、他校の監督から練習法や指導論を学んだ。
あれから10年、宮城の参加校は74校から59チームまで減少する一方で、東北熱男会は現在、約150人が繋がっている。