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「ラーメンも好きですけど…」柔道・角田夏実が“じつは悩み続けていた”過酷な減量…パリ五輪金メダルの裏にあった「階級変更」の大決断
posted2024/08/27 11:04
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Tetsuya Higashikawa/JMPA
パリ五輪でもクローズアップされたが、階級のある競技の選手が対戦相手の前に向き合わなければならない要素が「減量」である。減量をさほど気にしないで済む階級にいれば減量作業自体は楽だが、ふだんの体格から減量して出てくる選手に対し不利となる。だから選手は、体重を落とせるか落とせないか、ぎりぎりのラインで自身の階級を定めている。そのため、過去には十数キロもの大きな減量をして大会に出る選手もまれではなかったし、オリンピックに限らず、減量しきれずに失格になったケースも出てくる。
柔道女子48kg級で金メダルに輝いた角田夏実も、減量と向き合ってきた一人だ。もともとは52kg級の選手であったこと、27歳だった2019年秋に階級を1つ下げる決断をしたことはすでに知られているかもしれない。しかしその裏には、厳しい減量との闘いがあった。
身長162センチ、体重は「ふだん54キロ→48キロに」
長年取り組んできた階級から変えること、しかも上げるのではなく下げるのが簡単でないことは想像がつく。角田の場合も、試行錯誤して48kg級を主戦場としてきた。
そもそも、48kg級はかなり前に一度は視野に入れていた。
「52kg級だと減量がそんなにきつくなかったので、社会人になるときに48kg級にしたいと思っていました。ただ膝の手術をして体が大きくなったので、52kg級で試合に出ていました」
階級変更を決めたが、角田は48kg級、52kg級を問わず、女子の軽量級では身長が高い部類に入る。しかも、身長は伸び続けていたという。2023年夏の時点で、こう話していた。
「今は162cmくらいあります。なんだか、毎年2、3ミリずつ伸びています。最初は誤差かなと思ったんですけど、毎年そうなので(笑)」
162cmで48kg以内におさめるのは一般の人ならともかく、身体を鍛え上げたアスリートにとって楽なわけはなかった。
「ふだん練習している時期は54kgくらい。オフのときはもっとあります。減量はめちゃめちゃきついです。なんでこんなきついことをしているんだろうと思うんですけど」