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「このチームで勝たれへんのかと…」甲子園、強打・大阪桐蔭“衝撃の完封負け”はなぜ起きた? 理想のフルスイングと現実との“ズレ” 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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posted2024/08/15 17:02

「このチームで勝たれへんのかと…」甲子園、強打・大阪桐蔭“衝撃の完封負け”はなぜ起きた? 理想のフルスイングと現実との“ズレ”<Number Web> photograph by JIJI PRESS

強豪校の早期敗退が目立つ今大会だが、大阪桐蔭の2回戦での完封負けはやはり衝撃的だった

「低反発バットに対応するために必要だったのは、パワーをつけること。ロングヒットは出にくいので、低い打球を意識しながら、それが長打になるようにと心がけています」

 もっとも、大会に出場している指導者たちは低反発バットの影響を口にしたがらない。「みんな同じルールでやっていますから」。13日に敗れた智弁和歌山の中谷仁監督も、西谷監督も、判を押したように同じ言葉を口にした。

 その同じルールの中でどんな野球を展開していくかが重要ということだが、監督のマネジメントとして、難しさがあるのも事実だろう。バットが変わっても野球を変えずに戦うのか、それとも、多少なりとも、低反発バットを意識したような野球をするのか。

フルスイングと、勝つための野球の狭間で

 12得点を挙げてコールド勝ちした大阪大会準決勝・履正社戦での大阪桐蔭は、確実に野球のスタイルを変えてきていた。それを貫く難しさ、もともと染みついた野球からどう離れていくか。本大会の2回戦は、そんな課題に直面した敗戦だった。

「やる限りは理想のバッティングを追いかけたい。でも、大会に勝っていく上ではどんな打撃をしていくかは難しい問題です」

 大阪大会のある日、西谷監督はそう話している。つまり本来は、これまでと同じようなフルスイングをしながら、バットに対応していける技術を鍛えていきたい、という願望はあるのだ。しかし、低反発バット導入直後の今、勝利との狭間でどういう野球をしていくか、というジレンマは避けられない。

 実際、この日の大阪桐蔭打線の打撃が全て悪かったわけではない。

【次ページ】 打球の見た目と、選手たちの感覚のズレ

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