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「このチームで勝たれへんのかと…」甲子園、強打・大阪桐蔭“衝撃の完封負け”はなぜ起きた? 理想のフルスイングと現実との“ズレ”
posted2024/08/15 17:02
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
JIJI PRESS
目を逸らしてはいけない敗戦、と言えるかもしれない。
2度の春夏連覇を達成し、今大会も6年ぶりの夏の覇権を狙った強豪・大阪桐蔭が2回戦で敗れた。同校が夏の選手権で完封されたのは初めてだという事実が、この敗戦の衝撃を物語っている。
「選手たちとゲーム中も話しましたけれども、試合が終わって整理がついている部分もありますし、ついてない部分もある。冷静に振り返って話したいと思います」
大阪桐蔭・西谷浩一監督が、努めて冷静さを保とうとしていたのが印象的だった。敗因を矢継ぎ早に質問されても表情を変えない指揮官の様子はいつも通りだったが、「しぶとく粘り強くをモットーにやってきましたけれども、最後の力及ばず、残念というか無念です」という言葉に悔しさが滲んでいた。
大阪桐蔭がここまで打てないとは
これほど打てない大阪桐蔭を見たのは初めてかもしれない。大阪大会でも、準決勝の履正社戦こそ最高の試合運びを見せたが、5回戦、準々決勝、決勝戦と迫力に欠けた打線はこの夏の大阪桐蔭の象徴だった。
「記事読みましたよ。やっぱり、低反発の影響で追加点の長打が出ないです」
大会1回戦の後、そう話したのは橋本翔太郎だ。西谷監督をグラウンドで支えるコーチである。橋本コーチが感想を述べてくれたのは、筆者が大阪大会後に書いた記事のことだ。大阪桐蔭の打線は活発だが、もう一本が出ないのはバットの影響もあると指摘した。
投手の安全面を考慮して、この春のセンバツから導入された新基準の低反発バットは、全国の球児に新たな課題を突きつけている。今大会も19試合目までホームランが出なかったという事実が、このバットを扱う難しさを証明しているだろう。かつては5点差でもセーフティリードではないと言われた野球は消滅し、今大会はここまで、終盤で3点差以上の試合はひっくり返っていない。
指導者たちが口を揃えるのは「フライを打つと失速する」という言葉だ。だから、低くて強い打球を打つ必要がある。
下級生の頃からチームを引っ張って来た選手の一人、境亮陽はいう。