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「このチームで勝たれへんのかと…」甲子園、強打・大阪桐蔭“衝撃の完封負け”はなぜ起きた? 理想のフルスイングと現実との“ズレ”
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byJIJI PRESS
posted2024/08/15 17:02
強豪校の早期敗退が目立つ今大会だが、大阪桐蔭の2回戦での完封負けはやはり衝撃的だった
3回裏、二死二塁から右翼へ快音を放った4番・徳丸快晴のバッティングには目を見張った。
だが、ライトを超えるようにも思えた痛烈な打球は、相手右翼手が一瞬ファンブルしたあと、グラブに収められた。あとひと伸びが足りなかったのだ。
20年以上、甲子園の大会を全試合見てきた筆者の経験の中でも、完璧に捉えたように見えた一打だった。しかし、その打席について会心だったかと問うと、徳丸は意外な感想を語った。
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「いい感じでは打っていたんですけど、そこまで感触は良くなかったんです。あれがヒットにならないというのは、自分の力のなさだなと思います。もっと練習して自分をレベルアップしていかないといけないと思った」
打球の見た目と、選手たちの感覚のズレ
選手たちは微妙に感じとっている。自身の技術と、現実のわずかなズレをだ。
7回裏に代打で打席に立ち、左中間への飛球を放ったラマルもいう。
「少し開いてしまって、先っぽで打ってしまった打球でした。あの打撃はいい当たりではないなと思いました。低反発バットでは、しっかり捉えないと飛ばないです」
西谷監督は、敗因にフライアウトが多かったことを挙げているが、それは正確にいうと、「捉えた」フライアウトではなかったことに大きな要因があった。そこに選手たちは課題を感じたというわけである。
「この敗戦はショック」
「この敗戦はショックですね。このチームで勝たれへんのかと思います」
橋本コーチはをそう本音を覗かせた。メンバーは揃っているはずだった。取り組みもしっかりしていたし、過去の優勝チームにあった“徹底する力”も感じていた。
「試合前の雰囲気も良かったし」
おそらくチーム作りの問題ではないだろう。要因は他の何かにある。