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「死にたい」「僕が勝っていれば」何が卓球・張本智和を追いつめたか…「やめないでほしかった」プレーだけではない、水谷隼の不在の大きさ 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byTetsuya Higashikawa/JMPA

posted2024/08/10 17:27

「死にたい」「僕が勝っていれば」何が卓球・張本智和を追いつめたか…「やめないでほしかった」プレーだけではない、水谷隼の不在の大きさ<Number Web> photograph by Tetsuya Higashikawa/JMPA

男子卓球団体準決勝、第5戦でスウェーデンのケルベリに大逆転負けを喫してうなだれる張本

 団体戦は順当に勝ち上がり、準決勝でスウェーデンと対戦する。ダブルスをとり、第2試合も張本が勝利。だが第3、第4試合を落として2-2のタイとなる。第5試合の張本に勝負は託された。

 張本は2ゲームを先取、あと1ゲームで勝利という局面から続けざまに3ゲームを失い敗れた。日本の敗北も決まった。

「死にたい」ほどの敗戦

 試合後、張本は膝から崩れ落ちるとコートに突っ伏した。抱きかかえられても真っすぐに立てない。何よりも発した言葉が受けたダメージを物語っていた。

「死んで楽になるなら死にたい」

「もう力が残っていないです」

 それでも気力を奮い立たせ、「もうやるしかないです」と臨んだ3位決定戦での自身の成績は1勝1敗。

 試合を振り返り、張本は言った。

「スウェーデン戦も、フランス戦も、僕が勝てていれば終わっていたので」

 責任を一身に背負うかのようだった。

 エースとして引き受けるべき役割ではあるだろう。ただ、背負い込むものが大きすぎた。

頼れる男、水谷の引退

 東京五輪でも世界ランキングは日本男子最上位、真っ先に五輪代表となったことからわかるように、すでに実力は備えていた。とはいえ、張本の存在が前面に押し出されることはなかった。チームには水谷隼がいて、丹羽孝希がいた。水谷は言わずと知れた日本男子を牽引してきた第一人者であり、五輪出場は東京で4回目と大舞台の経験は豊富だ。どう過ごし、どう気持ちを整えるか、団体戦も含めて熟知する。

「やめないでほしいです」

 張本は引退を決意した水谷に対して言ったが、それくらい頼れる、大きな存在だった。そして丹羽も、ロンドン、リオに続き3度目のオリンピックというキャリアと経験を持っていた。年長の2人がいた。

【次ページ】 「この結果は必然」

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