ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
「このままじゃ終わるな…」DeNA京山将弥26歳を、“イップスで一軍登板ゼロ”の崖っぷちから「想像もできなかった成績」に蘇らせた言葉
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph bySankei Shimbun
posted2024/08/12 11:01
台所事情の苦しいDeNAブルペン陣にあって、さまざまな役割で奮闘する京山
「あと、よく言われたのは『考えるな』ですね。僕はよくピッチングについて考えてしまうんです。左手がどうだとか、足の使い方がどうだとか。そんなことは考えず、ただシンプルに腕を振る。そういうことが大事なんだって改めて気づかされました」
キャリアを積んでいけば経験値も増え、自分のピッチングに対して理解が深まる。しかし一方で細部にばかり気を奪われ、あれこれ考えすぎてしまい根幹を見失ってしまっては本末転倒だ。『木を見て森を見ず』という言葉があるが、イップスのときの京山は、まさにこのような状況だった。
新フォームを確立
無心で数を重ね、投げるボールに自信が宿れば、メンタルは必然的に落ち着いていく。投球の面では入来コーチが背中を押し、さらにメンタル面では東野峻ファーム投手アシスタントコーチがサポートしてくれたという。そしてシンプルなアプローチを辛抱強くつづけ、京山は春のキャンプで、自分のカタチを確立する。
「ランナーがいるいない関係なく、脱力をして全投球クイックモーションにしたら安定するようになって、足を上げたときの球速と変わらないので、これならばいけるなって」
スッと構え、脱力と力の入れ所がはっきりとしたフォーム。そしてゾーンへの意識も変わった。
「以前は右打者の外のラインとか、そういった細かいことを気にしていたんですが、今はアバウトでもいいからゾーンにどんどん投げ込んでいくスタイルに変えて。やってみたらこれでも通用するんだなって感じなんです」
また球種もリリーフということで、強いストレートとフォークのツーサイドピッチに絞った。そして現在は、ビハインドから火消し、回またぎ、勝ちパターンといったあらゆるシチュエーションで起用されている。だが、一軍の戦力になっていようとも、京山に安堵している様子はない。
「『明日は我が身』です」
「そうですね。一軍で投げられていますけど、ホッとしたということはないです。毎日のように『明日は我が身』ということを考えながら過ごしています」
解くことのない警戒心。確かに、ランナーが残った状態でマウンドに上がり打たれてしまうことが少なからずあったり、また8月4日の阪神戦(横浜スタジアム)では1アウトしか取れず3四球で降板するなど、決して盤石というわけではない。
「だから、まだまだですよ」
京山は力強い目線でそう言った。さらなる安定感と質の高いピッチングを求め、これからも精進していく。ただシンプルに、ひたすらに腕を振るだけだ。