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「ユニタードは衰退していくのか?」女子体操の会場で見た「着用選手は2人だけ」という現実…盗撮問題に向き合う“ユニフォーム選択”の現在地 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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posted2024/08/08 17:06

「ユニタードは衰退していくのか?」女子体操の会場で見た「着用選手は2人だけ」という現実…盗撮問題に向き合う“ユニフォーム選択”の現在地<Number Web> photograph by Getty Images

ドイツ代表は2人の選手がユニタードを着用して五輪本番に臨んだ

 それにしてもユニタードは見ている限りさほど普及していないようだ。ドイツ国内では着用している選手は結構いるとも聞くが、パリ五輪で種目別段違い平行棒6位入賞を飾った16歳のドイツ代表選手、ヘレン・ケフリクはレオタードを着用していた。若い選手は子どもの頃からレオタードでやってきているので、大きな大会でいきなりユニタードになると動きに影響が出るのかもしれないが、本家本元でもこのまま衰退していくのだろうかという疑念が出てくる。

なぜユニタードはなかなか広まらない?

 選手がユニタードを着用する際に感じるハードルについて、リオデジャネイロ五輪と東京五輪に出場した杉原愛子は以前、このように語っていた。

「私はユニタードを着ることを選びません。理由としては、タックル(抱え込み姿勢)やターンで足を持った時に滑ることがあって危ないのと、滑るという怖さがあるからです。手足の長い欧米人に比べて日本人はスタイルを気にしているのもあるかもしれません」

 ただし、杉原自身もセクシャルハラスメント対策から、ハイレグタイプとは一線を画す、短いスパッツ部分がついた体操用のユニフォームをプロデュースし、「アイタード」と名付けて商品化している。それだけ、女子の体操界では盗撮などが長年にわたって大きな問題となっているのだ。

体操以外の競技でも“広がる選択肢”

 そういった観点でとらえると、ドイツチームが「ユニタード」を着て東京五輪を戦ったことにはやはり意味がある。この選択は女子体操界に一石を投じ、各方面に影響を及ぼしたからだ。

 実際、パリ五輪ではビーチバレー女子の競技でこれまでと違うユニフォームで試合をする選手が登場し、話題となった。8月1日のスペイン対エジプトの試合で、エジプトの選手が黒のロングウェアを着ていたのだ。

【次ページ】 ユニタードが果たした“大きな役割”

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