オリンピックPRESSBACK NUMBER
「ナガヤマは落ちただろ?」柔道“誤審疑惑”に審判団は笑った「『待て』が間違いだった」不可解説明も…永山竜樹が記者に見せた涙「自分のスキだった」
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byJMPA
posted2024/07/28 17:24
男子60kg級・準々決勝、不可解判定で敗れた永山竜樹。抗議を続けたが、最後は一礼して畳を下りた
もし「待て」の前に永山がすでに落ちていたと判断したのなら、なぜ「一本」と言わなかったのか。2000年シドニー五輪で起きた篠原信一vsドゥイエ戦での誤審騒動を思わせるような理解に苦しむ判定が再び起きた。
納得しきれない永山は、畳を下りて古根川コーチに「完全に待てって聞こえてたんで(力を緩めた)」と訴え、金野強化委員長も状況確認にすぐ近寄ってきた。しかし、その場でそれ以上できることはない。永山は敗者復活戦に回ることになった。
鈴木監督によれば、現行のレギュレーションではリプレーの要求など含めて判定を覆すような方策はなく、永山が畳の上に居残って抗議したこともむしろ問題視され、金野強化委員長に対して厳重注意が出されたという。セッション終了後の審判団との協議についても「判定が覆る可能性は小さいと思っていた」とわかった上での行動であり、その様子をスタンドから見ていた前代表監督の井上康生も無念そうにこう言った。
「(準々決勝まですべて終わった)この時点で判定が覆ることはないでしょう。そんなことになったら(この後の試合スケジュールなど)すべてを組み替えないといけない。だから審判団が認めることは絶対にない。認めたとしても後日だと思います」
審判団「『待て』が間違いだった」
協議の中で冒頭のようなやり取りがあり、日本側の意見と審判団の説明自体はまったく噛み合わなかった。
鈴木監督は憤る気持ちを必死に抑えながら語った。
「僕らが言っているのは落ちた落ちてないじゃなくて、待てと言われた後に6秒間絞め続けることが柔道精神にのっとってますか? ということなんです。最近の国際柔道連盟は安全性や柔道精神に基づくルールをすごく厳しく作っている。それなのに審判の待てを関係なしに絞め続けることがフェアプレーなのか。むしろ相手にペナルティが行くべきなのに、こんな判定を許していいんですかと」
審判団はそこには触れず「あのタイミングで『待て』をかけたことは間違いだった。試合を継続するべきだった。だが、絞めで落ちたからルール通りの裁定だ」という辻褄の合わない説明を繰り返したという。
「最終的には主審が落ちたのを確認したとか、どんどん向こうの都合のいいように話が変わってきて収拾がつかない。永山選手は待てと言う声が聞こえていたと言っている。我々はそれを信じるだけです」
涙の永山「自分の隙だった」
前回の東京五輪同級金メダリストで、今回も永山と代表を争った高藤直寿も会場で見守っていた。
永山は20秒間はガリゴスの絞めを耐えられていた。相手が力を抜いていない以上、「待て」の声が聞こえた後も粘り続ければ結果は違ったのではないか。そう尋ねると高藤はこう答えた。