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「ナガヤマは落ちただろ?」柔道“誤審疑惑”に審判団は笑った「『待て』が間違いだった」不可解説明も…永山竜樹が記者に見せた涙「自分のスキだった」
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byJMPA
posted2024/07/28 17:24
男子60kg級・準々決勝、不可解判定で敗れた永山竜樹。抗議を続けたが、最後は一礼して畳を下りた
「そのままの体勢なら落ちなかったはず。そこで力を抜いたのが……」
高藤は最後までは決して言わなかった。スポーツ的な観点で言えば選手の責任とするのは酷な話だ。しかし、それが畳の上で『戦っている』柔道家の実際的な思いでもあるのだろう。
永山自身も同じだった。
割り切れない思いを抱えたまま、わずか2時間ほどのインターバルで臨んだ敗者復活戦、そして3位決定戦に勝ち、銅メダルを獲得した。ミックスゾーンではときに目に涙を浮かべながら、「自分の隙だった」と繰り返した。
「踏ん張っていたところで待ての声が聞こえて、そこで自分が気を抜いてしまった。そのちょっとの隙が負けに繋がった。ちょっと力を抜いたところにしっかり絞めが入ってしまった。そこからはちょっと記憶がないんですけど、待てがかかってから結構長くて、気づいたらああいう形になっていました」
28歳にして初めてチャンスを掴んだ大舞台。初戦から延長にもつれこむ苦しい試合で、そこを切り抜けたと思ったら不可解判定での敗戦とオリンピックの難しさを痛感した。
「準備の段階からいろいろなことがあって、いろいろな思いもあって、オリンピックで金メダルを獲るって本当に険しい道だなと感じていました。試合が始まったら思い切ってやろうとしたけどなかなか難しかったです。他の選手も動きが硬く見えたし、その中でも金メダルを獲るのが金メダリストなんだなと」
あくまで自分に責任を求めた。最後まで主審への恨み節は口にしなかった。