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「イトウにトミヤス…頼れるOAを欠くのは確かだが」トルシエがサッカーパリ五輪代表「グループリーグ突破はごく普通だ」と断言するワケ
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byAFP/JIJI PRESS
posted2024/07/24 17:03
パリ五輪大陸間プレーオフを観戦するトルシエ。大岩剛監督率いる日本への評価は高い
トルシエ:日本が五輪のグループリーグを突破するのはごく普通のことと思っている。これまでも過去の大会で何度もベスト8に進んできた。初戦の相手はパラグアイか。
――パラグアイ、マリ、イスラエルの順です。
トルシエ:難しいグループであるのは間違いない。パラグアイは侮りがたい相手だし、マリはフランス同様に屈強で個の力も強い。すべての試合が簡単ではない。それでも日本はこれまでのように突破するだろう。
――その後は準々決勝ですが、そこは対戦相手によるのですね。
トルシエ:一発勝負ではすべてが可能だ。しかし日本のトランジションはちょっと突出している。EUROを見ても明らかだが、今日のサッカーではトランジションと縦のプレーが最も重要だ。成功を得るカギは縦のプレーだ。縦へのパスであり攻撃のトランジションだ。スペインのようにボールを保持し支配できるチームだとしても、相手に対して危険な状況を作り出すのはパスを2、3本だけ繋いだときだ。スペインの得点は、いずれもパスを数本繋いだだけのときのものだ。
日本は“その能力”に長けていることを見せつけた
――かつてとは異なる新しいティキタカですね。
トルシエ:日本にも同じ可能性がある。日本は2、3本のパスでトランジションをおこなう。以前のように20~30本のパスを繋げる能力は今の日本にはない。パラグアイやマリは違うだろう。彼らは今日のフランスのように2~30本のパスを繋ぐ。しかし今日のサッカーで求められるのはトランジションの能力だ。トランジションがサッカーに革命をもたらした。日本はその能力に長けていることを今日見せつけた。日本は注目に値するチームだ。
まとめると今日見たのはリアクションのチームであって、ボールを保持してプレーを構築するチームではない。規律に溢れる守備をして、ボールを持たずにリアクションに特化するチームだ。そして2、3本のパスから、素早いトランジションでカウンターアタックに転じられるチームだ。それが同時に今日におけるサッカーの革命であり、日本はアグレッシブな守備の規律の限りない可能性を、優勝候補のフランスに対して示した。日本に自分たちの長所を意識させるという点で、最高のテストになったといえる。
――よくわかりました。メルシー、フィリップ。<つづく>