オリンピックPRESSBACK NUMBER
「私より上手い子は他にいるのにな」…あの“安倍マリオPV”で話題の「体操女子高生」はなぜ五輪を諦めた? 24歳になった土橋ココが振り返る葛藤
posted2024/07/21 06:01
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph by
AFLO
酷暑の中で、パリ五輪の幕が上がろうとしている。思い出されるのは、コロナ禍に翻弄された3年前の東京五輪だ。その幕開けとなったのは、2016年リオ五輪閉会式での「フラッグハンドオーバーセレモニー」。故・安倍晋三首相(当時)がマリオ姿で出演するなど、喝采を呼んだプロモーション映像は、ひとりの女子高生が渋谷のスクランブル交差点で開脚ジャンプするシーンから始まっていた。あれから8年――多くの人の記憶に残る彼女は、いまどうしているのだろうか?《NumberWebインタビュー全3回の2回目/つづきを読む》
リオ五輪の閉会式で放映された東京五輪のPR映像。冒頭のシーン、渋谷のスクランブル交差点で美しい開脚ジャンプを見せたのは、当時16歳の土橋ココさんだった。結果的にそのPR映像は国内外で大きな話題となり、土橋さんは「東京五輪の期待の星」と持ち上げられることになった。リオ五輪閉会式からの日々は、どう感じていたのだろうか。
土橋さんが、重い口を開く。
「あの時の自分は、なんだろう……そもそも体操自体を楽しめてなかった時期で。なぜか結果は出ているけど、体操が楽しくない。そのギャップに悩んでましたね」
世間の注目と同時に感じた「伸び悩み」
世間から注目されるのと、伸び悩んだ時期が意外にも重なっていたという。
リオ五輪の閉会式で流れた映像に出演し、がぜん注目度が増す一方で、土橋さんはひそかに悩みを抱えていた。
技の切れが以前より鈍くなったと感じていたのだ。本人にしかわからない、微妙な感覚のズレだった。
「高校に入ってもインターハイで優勝したり、結果は残してたんですけど、いざ中身を見たら中学の時よりも技の難易度はちょっと下がっていたんです。今までできていたことができなくなると、やっぱりそれが一番のストレスというか。自分ではいつも通り、同じ感覚でやっているのになんでって……」
違和感の正体は、体の成長だった。高校に入ると、土橋さんの身長は10cm以上も急激に伸びた。当然、体重も増加し、それまでと同じ感覚では技が決まらなくなっていた。一例を挙げれば、中学までできていた床の後方三回ひねりが、ある日突然できなくなったりしたという。