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バスケ日本代表 五輪前の熱戦つづく裏側で…渡邊雄太“SNS離脱”で考えるファンとアスリートの距離感「SNSの世界はあくまで一面的なもの」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/07/06 06:02
ふくらはぎの故障を公表したパリ五輪代表候補の渡邊雄太。同時に6月末で自身によるSNSでの発信をストップ
人の心は、時にもろい。
昨年W杯前に「パリ五輪の出場権を取れなかったら代表から引退します」と大観衆の前で宣言し、48年ぶりに五輪出場権を自力で獲得した渡邊は、ハートが強いとされている。そんなアスリートでさえ、例外ではないのだ。
渡邊はメンタル面への影響を考慮して、6月29日のケガについて知らせる投稿をもってX(旧Twitter)での発信を終えた。今後、渡邊のXの運用はスタッフが、情報発信などの用途で用いるだけとなった。昨年のW杯で一部の席が空席になっていた問題を世間に向けて発信するなど、渡邊のXの利用方法の上手さとインパクトは日本のバスケ界でも群を抜いていた。
日本バスケットボール界のことを真摯に考え、行動してきた渡邊でもSNSで匿名による誹謗中傷を受け続けてきたことは想像に難くない。そこにメンタルヘルスの問題も加われば、SNSから距離をとるというのも賢明な判断なのかもしれない。ただ、それは結果的にファン側からしても貴重な機会を失うことにもなった。
こうした状況は、SNS全盛時代ゆえの弊害でもある。SNSを通してみる世界は、あくまで一面的なものでしかない。例えば今回の渡邊のケガについても、どこまで正確な背景が伝わっているだろうか。
実は、NBA選手には国際大会の28日前からしか参加できないという「28日ルール」がある。だから、NBA選手のコンディション調整は非常に難しい。渡邊の場合は、NBAでは今シーズン終盤にプレーしていないから、なおさらのハンデがあった。
渡邊が見せてきた代表活動への「貢献」
では、代表活動をするうえで制約のある彼が、これまでどうやって日本代表で活動してきたのかご存じだろうか。
世界中の代表選手のなかには重役出勤よろしく、大会直前になってようやく合流する者だっている。しかし、渡邊は違う。2019年の中国W杯、2021年の東京五輪、2023年沖縄W杯と、いずれも「28日ルール」をふまえたうえで、参加可能なタイミングでいち早く合流していた。こうした事実は、彼の代表にかける想いや責任感の大きさを物語っている。