濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「スターダムとかマリーゴールド、負けてられない」人気女子レスラー、ウナギ・サヤカが異例の後楽園“2度目の自主興行”へ…最終目標は“あの大会場”
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2024/06/26 11:00
今年1月の自主興行後もさまざまな団体のリングに上がり続けるウナギ・サヤカ
またマーベラスでは「マーベラスといえば長与千種というイメージをひっくり返す。所属じゃない人間が団体を代表する選手になるの、ヤバくないですか?」。Evolutionでは「プロデューサーの諏訪魔を引っ張り出して倒し、自分がプロデューサーになる。そのほうが面白い」と主張。ベルト以上の価値観を掲げるのも特徴的だ。
大ベテランにも遠慮なく噛み付く大胆さがありつつ、自分よりキャリアの浅い選手に寄り添う姿勢も見せる。たとえばJTOの神姫楽ミサやAoiに対しては組んでも闘っても、勝っても負けても突き放すことがない。対戦した後に2人一緒にコメントすることも。
以前、ウナギは「自分に必要なのはライバルとパートナー」だと言っていた。既に歴史を築いてきた人間と闘うだけでなく、これから歴史を作っていく同志が必要なのだと。
「自分と同じ考え、スタンスでプロレスに取り組む人間を増やしたいというのはありますね。誰にも、何にもぶら下がらないで生きるプロレスラーが増えるといい」
「スターダムとかマリーゴールド、負けてられない」
団体によって、相手によってテーマが変わる。もしかしたら、ウナギは今のプロレス界で最も多くのテーマを抱えているのではないか。日々の活動の中で、頭がパンクしそうになる時はないのだろうか。
「それは全然ないんですよ」とウナギは即答する。
「なぜかっていうと、自分の中では全部が同じことだから。やりたいことがあって、そこに向かうためにひたすら全力でやってるだけなので。“どの団体で何をして”というよりは、どれも一つの目標への一本道なんですよ」
昨年夏、ウナギはZERO1のシングルリーグ戦「火祭り」に出場。大谷晋二郎の推薦を受けてのことだった。非公式戦を含め男子選手6人と短期間に対戦。ベテラン・田中将斗の必殺技スライディングDを勝手に譲り受けるとスライディングTANAKAと命名、自身の得意技にしてしまう。
その田中とは自主興行でも対戦。田中とタッグを組んだのは鈴木みのるだった。ジャガー横田や井上京子に対してもそうなのだが、ウナギはベテランの懐に大胆に飛び込んで不思議な関係性を作ってしまう。
といってそこに“処世術”の匂いもない。先輩に可愛がられただけ後輩も可愛がって、どんな団体の色にも塗り潰されることがない。そうしてウナギは、大きな団体にも立ち向かおうとしている。
「スターダムとか、それから今はみんな(5月に旗揚げした新団体)マリーゴールドが気になってると思うんですけど。負けてられないですね。団体一つに負けてる場合じゃない」