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“闘うバービー人形”の急成長…見た目は派手でも練習熱心、Chi Chiをベテラン選手も絶賛「いきなり髪の毛掴んできたからね(笑)」
posted2024/06/29 11:04
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
プロレスラーは、新人時代にどんな経験を積むかが成長に大きく関わってくる。先輩たちに揉まれ、あるいはキャリアの近い選手たちと切磋琢磨。他団体での試合もプラスになる。
「そういう意味で私たちは恵まれてますよね」
そう語るのは、昨年3月にデビューしたChi Chiだ。新団体Evolutionの旗揚げとともにレスラーに。新人だけでスタートした団体だから、先輩に頼らず同期と看板を背負ってきた。
キャッチフレーズは“闘うバービー人形”。ピンクのコスチュームにブロンドの髪はインパクトが強い。バービー人形には実在の人物をモデルにしたシリーズがあり、プロレスラーとして活躍することでバービー人形になるのが夢だという。そう紹介すると“キャラ先行”という感じがしてしまうが、実は本格派の選手だ。
Evolutionとは、もともと全日本プロレスで諏訪魔、石川修司(現在はフリー)たちが組んでいたユニット。団体はその女子版として始まっている。諏訪魔と石川はプロデューサー、後に石川がGMとなった。3人の所属選手を指導するのも諏訪魔と石川だ。
「久しぶりに気が強い新人が出てきた」
“王道”と呼ばれる全日本プロレスの流れを汲むプロレスを、Chi Chiたちは教わってきた。特に重視してきたのが“受け”だ。プロレスをプロレスたらしめる要素の一つと言ってもいいだろう。
実際に技を受け、投げられる練習では技のかけ手を諏訪魔と石川が務めることも。ちなみに諏訪魔は身長188cm、石川は195cmである。Chi Chiたちは女子の試合ではまずありえないサイズとパワーを、道場で体感している。
旗揚げ当初、試合の機会はEvolutionの興行などに限られていた。外部からトップ選手を招き、玉砕。それを繰り返すしかない。選手が少ないから1興行の試合数を確保するため、シングルマッチが多くなる。経験の偏りが課題だった。
もちろん運営側もそれを分かっていて、昨年後半あたりから選手を他団体に参戦させるようになった。WAVEやOZアカデミー、マーベラス、センダイガールズ。Chi Chiも同期のZONESも、各団体にすぐ定着している。各団体のトップどころと対戦し、タッグを組み、新人同士でしのぎを削る。経験値は大きくアップした。
どの団体でも、諏訪魔と石川に教わった基礎の部分に加えて負けん気の強さも高く評価されている。
マーベラスでChi Chiと対戦したキャリア29年のベテラン・永島千佳世は「久しぶりに気が強い新人が出てきた」とデビュー1年あまりの若手を称えた。
「ここ何年も、ああいう選手はいなかったんじゃないかな。いきなり髪の毛掴んできたからね(笑)」