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藤井聡太でも伊藤匠でもない…小3の全国大会で優勝、藤井世代“もうひとりの天才”はなぜプロに進まなかった?「将棋を指す行為が“嫌い”になった」
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byKeiji Ishikawa
posted2024/06/23 06:00
藤井聡太と伊藤匠。2人が出場した小学3年の全国大会で優勝したのが川島滉生さんだ。本人に話を聞いた
「記憶はほとんどないんですよね。あの大会で6局くらい指してるんですけど、そのうち将棋の内容を覚えているのは準決勝と決勝の2局だけで、あまり覚えてないんですよ。あとで記事を読んで、その時のことを知るみたいなケースが多いんです。当時の藤井少年が大泣きしたみたいな記事がありますけど、あれが、そうだったんだって」
なぜプロ棋士の道を選ばなかったのか?
八冠全制覇を成し遂げた藤井に、同い年として竜王戦挑戦者をつかんだ伊藤。今後の将棋界を引っ張っていくホープであるのは間違いない。その2人を抑えて幼少期に優勝した川島さんは今、早稲田大学でアマという立場で将棋と向き合っている。川島さんは高校1年生にして高校の全国大会で優勝を果たし、進学した早稲田大学でも将棋部に入部し、22年6月に開催された第78回学生名人戦を制し、学生名人の座に就いた。さらには出場権を得た朝日杯将棋オープン1次予選では、谷合廣紀四段、北島忠雄七段とプロ相手に連勝を飾ったのだ。
これだけの実績を見ると、こんな疑問が浮かぶ人は多いだろう。
なぜプロ棋士の道を選ばなかったのか?
しかし、その決断に至るまでに、彼の中に確固たる指針があった。
そもそも棋士を目指す養成組織である「奨励会」に入らないことを決めたのは、前述した大会での優勝から1年後、小学校4年生でのことだった。
「奨励会を受けなかった理由は2つあるんです。まず、極端に言うと当時、将棋を指すという行為が“嫌い”だったんですよ」
勝つことを宿命づけられていた感じがあった
将棋というゲームに関しては割と好き嫌いがない――いや、今現在も指していると「面白いと感じますし、語弊があるかもしれませんが“自分は将棋に向いている”というのは常にあるんです」とも話す姿からは、本当に将棋が嫌いとは思えないのだが……。
川島さんは当時の心中について、こう回想する。