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藤井聡太でも伊藤匠でもない…小3の全国大会で優勝、藤井世代“もうひとりの天才”はなぜプロに進まなかった?「将棋を指す行為が“嫌い”になった」
posted2023/11/10 06:00
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph by
Keiji Ishikawa
準優勝・伊藤匠、第3位・藤井聡太
様々なスポーツで〈子供の頃からその才能を嘱望された〉というエピソードはしばしば聞く。例えばバルセロナの下部組織に所属した久保建英、史上最年少で日本代表に選出された卓球の張本智和は10代前半からその輝きを放ち、今に至っている。
そういった才能の輝きは、将棋の世界でも同等、いや他競技以上に鮮明なのかもしれない。
第36期竜王戦のカードが藤井聡太竜王・名人と伊藤匠七段の「同学年対決」に決まって、あらためて脚光を浴びた写真がある。それはさかのぼること11年前、ある小学生対象の全国将棋大会での一コマだ。森内俊之名人と高見泰地四段の前に、かわいらしい3人の少年の姿がある。
その左端は伊藤匠くん、右端は藤井聡太くんだった。
同大会で伊藤は準優勝、藤井は3位に入った。なお準決勝では伊藤に敗れた藤井が号泣した。両者のエピソードは将棋ファンなら誰もが知ることになったが、同大会決勝で優勝したのは伊藤ではなく、写真の中央にいるメガネ姿の「川島滉生くん」だ。
川島くんは小学生の頃から「たっくん」こと伊藤と、同じ将棋クラブで腕を磨き合った間柄だった。
「あの一局は僕の会心譜で、相当上手く指せたなって記憶しています。戦型は相矢倉だったんですけど、たしか向こうが普段やらないような変化を注文つけてきて、そこから僕が猛攻を仕掛けて、うまく玉頭を突破して攻めた感じの将棋でした。割と一方的になったんですよね」
藤井についての記憶は…
現在、21歳となった川島さんはこう鮮明に記憶していた。その一方で、十数年後に将棋界の八冠王者になる3位の藤井については……。