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ママ友から「どんな仕事してるの?」産後4カ月でまさかの実戦…“寿引退”を選ばなかった藤本つかさが語る「プロレス引退の唯一の基準」
posted2024/06/01 17:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
L)本人提供、R)Norihiro Hashimoto
女子プロレスの世界には実力派レスラーがいてアイドルレスラーもいて、ベテランも新人も、それに“ママレスラー”もいる。
結婚して出産して、子育てしながらプロレスのリングに上がる。そんな女子選手は、少なくとも「珍しい」というレベルではなくなった。結婚したら、子供ができたら仕事をやめるような時代ではないのはプロレス界も同じ。むしろ一般社会より進んでいる部分もある。アイスリボンのトップ選手、藤本つかさもママレスラーの1人だ。
もともと役者を目指し芸能活動をしていた藤本は、プロレスを題材にした映画に出演したことから2008年にレスラーデビュー。芸能界からのプロレス挑戦にまつわる偏見を打ち破った先駆者でもある。
エースとして活躍する一方で、団体の取締役選手代表に就任。リング外でも重責を担った。プロレスにどっぷり浸かった生活。けれどファンに「プロレスと結婚したようなもんだね」と言われると否定していた。
「それは絶対イヤですって返してました(笑)。結婚もしたいし子供もほしいんですって」
“寿引退”は選ばなかった
仕事でもプライベートでも、やれることは全部やりたかった。「なんでもやってやろうって。そういう考え方になれたのはプロレスをやってきたからかもしれないです」と藤本。
結婚したのは2022年。この年の5月から休業に入った。「結婚したからには主婦というものもやってみたい」という気持ちがあったそうだ。ただ“寿引退”は選ばなかった。プロレスラーとしての可能性を捨てるつもりもなかったのだ。
「休業に入ってみると、プロレスから離れた寂しさみたいなものはなかったです。大会の会場に行くこともあって、選手たちやファンのみなさんの顔を見ていたからですかね。
家ではNetflixのドラマを見まくってました(笑)。休業前は連戦だったので、体のメンテナンスもして」
エネルギーの塊のような藤本だが、妊娠すると不安にかられることもあった。
「“検索魔”になってましたね。妊婦さんに関するYouTubeの動画もたくさん見て。検索してると“何億人に1人の難病”みたいな情報もあったり。やっぱり怖くなってしまって」
そういう時に頼りになったのがママ友、出産の先輩たちだ。同期である星ハム子(娘の星いぶきもレスラーだ)、元レスラーでレフェリーのMIO、リングアナを務めてきた千春と、アイスリボンには“ママ”がたくさん。元レスラーの大畠(大石)美咲にもよく電話をしたそうだ。
「やっぱり経験者なので、何か聞くとすぐ答えが返ってくるんですよ。その答えも説得力があって。“つわりはどうすれば”と聞いた時は“我慢しかないね”と言われましたけど(笑)。でもそういうものなんだなって思って落ち着くことができました」