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ママ友から「どんな仕事してるの?」産後4カ月でまさかの実戦…“寿引退”を選ばなかった藤本つかさが語る「プロレス引退の唯一の基準」 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byL)本人提供、R)Norihiro Hashimoto

posted2024/06/01 17:00

ママ友から「どんな仕事してるの?」産後4カ月でまさかの実戦…“寿引退”を選ばなかった藤本つかさが語る「プロレス引退の唯一の基準」<Number Web> photograph by L)本人提供、R)Norihiro Hashimoto

第1子の出産を経て、期間限定復帰中の藤本つかさ

スターダムで岩谷&羽南に快勝

 藤本は復帰すると新たな一歩も踏み出している。5月18日、スターダムの横浜武道館大会に出場したのだ。ここ数年、アイスリボンとスターダムは交流がなかった。2016年にはベストフレンズとサンダーロック(紫雷イオ&岩谷麻優)の対戦が浮上したがウヤムヤになって実現せず。

「あの時は“大人ってしょうもな!”って呆れてました」

 そう振り返る藤本が、自ら“禁断の扉”をこじ開けに行ったのだ。試合はベストフレンズがハードヒットなスタイルを全開にして岩谷麻優&羽南に快勝。岩谷は「久々に心が折れました」と完敗を認め、保持するIWGP女子王座をかけてのリマッチを藤本に要求。藤本は条件として、アイスリボンでの対戦をアピールした。点を線につなげたのだ。

「昔の因縁とか、安里紗にやり残しがないようにとか、そういう理由でスターダムに上がったわけではないんです。大事なのはアイスリボンとスターダムのこれから。ここから何が生み出せるかだし、それは自分の試合に限らずですね」

プロレスラー姿は「娘には見られたくない」

 スターダムにはアイスリボンを退団した鈴季すず、テクラもいる。彼女たちとの“再会”を願うアイスリボンの選手もいるだろう。大きい団体の選手を相手に実力を証明したいという思いもあるはずだ。

「今のアイスリボンは若い選手が主体。でも試合内容には自信があるので、あとは注目されるきっかけがあれば。私は入口を作りました。ここからは選手それぞれがどう動いて、何を言うかですね。最後は自分しだいです」

 復帰したばかり、なおかつ2度目の休業も決まっていて、それでも藤本はアイスリボンの先頭を突っ走る。現状、アイスリボンのシングル王座とIWGP女子、2冠の可能性もあるのだ。

 再復帰する頃には、いま1歳2カ月の娘もママの凄さを理解できるようになるかもしれない。チャンピオンベルトとともに娘とリングで記念撮影、そんな場面が見られる可能性もある。

「いや~、それはいいです。見られたくない。プロレス見て、もしやりたくなったらどうするんですか(笑)。“そんな危ないことやめなさい、ケガしたらどうするの!”って言っちゃいますよ。でも道場で練習を見てるからか、今も家で前転したりチョップしてきたりするんですよね」

 本人がやりたいって言ったら止められないですもんねぇ、プロレス楽しいし……と藤本。そう語る顔には“母”と“プロレスラー”が違和感なく同居していた。

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