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「リーチさんの喜んでる顔を見たい」リーチマイケル35歳が後輩たちに慕われまくる理由…キャプテン拒否から一転「ビールをたくさん飲ませ…」
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byJIJI PRESS
posted2024/05/29 17:05
チームの低迷期を支えてきたリーチマイケル(35歳)。人生初めての胴上げを経験した
「リーチさんの何がすごいってタックルです。ずっとタックルしてる。良いタックルがあったと思うと『またマイケルや』と。どこにでもいる。そこがスゴい」(原田)
それもただのタックルではない。前半3分にはトライ体勢に入ったワイルドナイツSH小山大輝にゴールライン上でモウンガとともにダブルタックルを浴びせて落球させた。11分には、やはりトライ体勢に入ったワイルドナイツFB山沢拓也の抱えたボールを押し止めてトライを阻んだ。
試合は開始早々からワイルドナイツが猛攻を見せたが、リーチの「どこにでもいる」タックルが前半のピンチをことごとく摘み、トライを許さなかったことが試合の流れを変えたのだ。
「試合中は自分たちの表情と相手の表情を意識して見ていました。こっちが元気なときは向こうが暗くなって、向こうが元気になるとこっちが暗くなったり。僕はキャプテンとして、トライを取られたときもポジティブな声を出したり、明るい表情で次の方向性を示すことを心がけました。良いプレーがあれば名前を出して『ワーナー、いいジャンプだ』とか、フロントローに『ナイススクラム』とか」
歓喜より堀江を優先「寂しさ半分」
そして迎えた勝利の瞬間。しかし、リーチは喜びをみせなかった。腕を突き上げるでもなく、チームメイトと抱き合うでもなく、滑川剛久レフェリーと握手をかわし、堀江翔太に握手を求め、それから仲間のもとへ向かい、一人一人と静かに握手し、ハグをかわした。
「やっと優勝できてホッとしています。最後は堀江さんとピッチに立てて良かったけど、試合が終わった瞬間は喜び半分、寂しさ半分というか……。僕自身、もっと『ヨッシャー』という声が出るのかなと思ったけど、なんでかな? 堀江さんの最後の試合でしたしね」
ともに4度のワールドカップを戦った戦友にして盟友、堀江への感謝と労いの思いが、無意識のうちに静かな振る舞いをさせたのかもしれない。悲願の優勝を掴んだ35歳は、喜びと安堵を静かにかみしめていた。味わい深い光景だった。