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「リーチさんの喜んでる顔を見たい」リーチマイケル35歳が後輩たちに慕われまくる理由…キャプテン拒否から一転「ビールをたくさん飲ませ…」
posted2024/05/29 17:05
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph by
JIJI PRESS
まるで「こけし」だった。
5月26日に行われたNTTリーグワンプレーオフ決勝、トップリーグの東芝時代以来14季ぶりの優勝を飾り、表彰式が終わって間もなく始まった、ブレイブルーパス東京の歓喜の胴上げ。トッド・ブラックアダーHCに続いて選手たちの輪に招き入れられたリーチマイケルは、両腕を身体にぴったり沿わせ、全身を一本の棒のごとく固めた姿勢のまま、3度、宙を舞った。
「(胴上げは)人生で初めて。とりあえず考えたのは、しっかり体幹を固めておこう、ということだけ」
試合後の記者会見で、謎の姿勢について問われると、リーチは苦笑してそう答えた。それについては考えていなかった、と言いたげな表情だった。
実は緊張していたリーチ
「人生で1回も優勝していないから、1回でいいから優勝したい」
これは優勝会見のほぼ24時間前、同じ場所で開かれた決勝前日会見でのリーチの言葉だ。ワイルドナイツのロビー・ディーンズ監督、坂手淳史主将、ブレイブルーパスのブラックアダーHCと同席した会見で、リーチは控えめな言葉を並べた。
「僕らは明日もアンダードッグ。僕が入ってから、東芝は調子がいいときも悪いときもあったけど、パナはいつも良くて最後は必ずパナが勝った。でも明日は、僕らが必ず勝つというマインドセットを持って臨みたい」
それまでの優勝経験は「高校時代の全道大会と関東大学リーグ戦くらい」。東海大3年のときは大学選手権決勝で帝京大に1点差で敗れ、東芝入り後も2015年度トップリーグ決勝でパナソニックを追いつめながら1点差で敗れた。それを最後に東芝は低迷期を迎え、決勝に勝ち残れないシーズンが続いた。
迎えた14年目のシーズン。35歳のリーチが主将に戻ったブレイブルーパスにはオールブラックスの司令塔リッチー・モウンガが加わり、着実に勝利を重ねた。そして迎えたワイルドナイツとの決勝。初の優勝に挑む決戦を前に、いくつもの修羅場をくぐってきたリーチでも平常心を保つのは難しかった。
決勝の2日前、府中グラウンドでの公開練習後には「ワクワク感と緊張感が半々です」と心境を明かした。
「緊張しないようにしたい。でも緊張しますね(笑)。代表のときとも違う」
そんなリーチの心を救ったのはふたつの要因だった。