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韓国プロ野球「ロボット球審」導入でどう変わった? 「すっぽ抜けがストライク」「伝達ミスで大炎上」現地日本人コーチが語る“AI判定のリアル”
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byJIJI PRESS
posted2024/04/30 11:02
韓国プロ野球では今季から「ロボット審判」が導入された
そんな騒動とAI審判の功罪を語ってくれたのが、中日ドラゴンズなどで長く活躍した名捕手で、今シーズンから起亜のコーチに就任した中村武志氏だ。中村氏はすでにYouTubeチャンネル「野球いっかん!」に出演し、AI審判に「野球をダメにする」と全否定に近い発言をしていたが、現在では少し前向きな見方に修正したようだ。
「ダメにするとも思ったけど、やはりそれでやるしかないと今は思っています。横(ベンチ)から見ている限りでは人間(審判)がやるよりストライクゾーンが広くなるというか、少しズレているなと感じます。特に上(高め)に。抜けた変化球がストライクと判定されるので、投手はそれに合わせたボールを投げようとする動きも出てきています。人よりも正確といえば正確。あとはこちらがいかに慣れるのか、ということじゃないでしょうか」
高めの変化球に甘いAI
審判によって「外に甘い」、「低めは厳しい」という傾向があったり、そもそもばらつきがあったりと人間には味が出るが、バッテリーはそこを把握する必要がなくなる。ストライクゾーンを「面」で意識しがちな人間に比べて、AIは「箱」でとらえる。その分だけ上から落ちてくる変化球がストライクとなる違和感に“慣れ”て適応すれば、多くの問題は解決する。
「見ている人にとってはどっちでもいいだろうね。でも投手にせよ、打者にせよプレーヤーは『え?』が多かった。これからも科学技術だから進歩はするだろうけど、何のために採用したのかって言われたら、いまだに僕はわかりません。時短にはならないし、人員削減にもつながらないでしょ。しいていえば判定にあきらめがつくから、納得はしますけどね」