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大阪桐蔭でセンバツ優勝→まさかのドラフト“指名漏れ”から2年…涙の元エースの現在「自分がここに来たことは絶対に間違いじゃない」
posted2024/04/29 11:07
text by
高木遊Yu Takagi
photograph by
(L)Yu Takagi、(R)Nanae Suzuki
「え、高卒2年目なの!?」
東海地区が担当外のNPB球団スカウトがその出色の出来に驚いたのは、大阪桐蔭高からHonda鈴鹿に入社し2年目になる大型右腕・川原嗣貴だ。高校時代は、まさかのドラフト指名漏れを経験したが、社会人野球の世界でメキメキと力をつけている。
2年前の秋、18歳の少年には残酷な現実が突きつけられた。
大阪桐蔭高に入学すると2年春からベンチ入りし、3年春には1学年下の前田悠伍(ソフトバンク)との二枚看板でセンバツ甲子園を優勝。胴上げ投手として歓喜の輪の中心にいた。夏は自身が未登板の準々決勝で敗れたが、旭川大高戦で8回3失点、二松学舎大附戦では6安打完封と大きな存在感を放った。
さらに侍ジャパンU-18代表として出場したU-18W杯では、アメリカの硬いマウンドにも適応し、4試合13イニングを投げ無失点。3勝0敗16奪三振という好投に次ぐ好投で最優秀投手、ベストナインを獲得した。
実績十分も…ドラフトではまさかの「指名漏れ」
こうしてアピール十分でドラフト会議を迎えたかに思えたが、結果は無情なものだった。
そんな失意の中、選んだ次の舞台は社会人野球だった。高卒の選手のドラフト会議での指名が解禁されるのは3年目だが、2年目となる今年から既に強い覚悟を持つ。
「自分がHonda鈴鹿の投手陣全員を引っ張っていくという強い気持ちを持っています。社会人野球を代表するような投手になれるよう成長していきたいです」
6月にようやく20歳になる川原ではあるが、その言葉通りの姿を桜舞う中で見せた。
まず、4月上旬のJABA静岡大会のパナソニック戦に先発登板すると、8回5安打無失点で勝利投手に。続く4月中旬のJABA日立市長杯では初戦のエイジェック戦で先発を任された。