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“なでしこ”を背負った天才・岩渕真奈30歳で引退「ちょうどいい時代に生まれた」なぜスパッと決断できたのか…痛感した“時代の変化” 

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了戒美子

了戒美子Yoshiko Ryokai

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photograph byJFA/AFLO

posted2024/02/28 11:02

“なでしこ”を背負った天才・岩渕真奈30歳で引退「ちょうどいい時代に生まれた」なぜスパッと決断できたのか…痛感した“時代の変化”<Number Web> photograph by JFA/AFLO

昨年9月、引退発表後に参加したJFAファミリーサッカーフェスティバルにて。岩渕真奈が積み上げてきた実績と影響力は後進の発展に大きく活かされる

 引退直前、岩渕をめぐるニュースは大きく二つあった。

 一つはW杯メンバーからの落選。16歳から常に日本代表に選ばれてきた彼女が初めて大きな公式戦を外から見つめることになった。

 もう一つは所属していたアーセナルとの契約満了。2022/23シーズンは数字的にも苦しみ、前半はアーセナルに所属し3試合出場無得点、冬には新天地を求め同じロンドンを拠点とするトッテナムにレンタル移籍するも公式戦合計13試合1得点と悔しさが残った。

 結果的に、全く自由な状態に置かれることになり彼女が導き出した決断は引退だった。

「もし選ばれていたら…でも仕方ないじゃないですか」

 W杯メンバーからの落選は直接的に引退のきっかけとなった。

「いろいろ支えてくれている人たちもいるから頑張らなきゃなって思っていた中での発表で、メンバーに入らなくて。もちろん、悔しかったし悲しかったですけど、いい意味でそこで決心もついたし、なんかちょっと本当に最後の1年はもう頑張りたくないけど頑張っていた感があったから、だから割り切れたっていう感覚ですかね」 

 とはいえ当然のことながら、落選だけを理由に引退を決断したわけではない。さかのぼると、2022年5月には両足首の手術を受けた。不調はその影響を大きく受けたものだった。

「手術してからもう、このタッチでここら辺に置けるはずというところに置けなくなってきたり、そういう感覚が自分の中にあって、なんかそれが苦しかったのはあります。自分のプレーがまずうまくいかない最後の1年だったんで、だから楽しいはずのサッカーを嫌いになる前にやめようって思ったぐらいです」

 つまりこの1年間、引退のふた文字はうっすらとだが常につきまとうものではあった。

「正直、引退は昨季のシーズン中から考えていました。シーズンが終わって、ワールドカップで最後だろうなって思っていたけどうまくメンバーに入らなかった。入らないってなったときに、もう無理だと思いましたね。そこでちゃんとワールドカップメンバーに入っていたらきっと楽しくて、またパリ目指せるなら目指していたかもしれないですけど、別に仕方ないじゃないですか。なんか、もう自分が目指すものはないなって思ったのが一つです」

【次ページ】 “引退発表”を遅らせた理由

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