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格闘技PRESSBACK NUMBER
「熊出没注意」の山道を駆け抜け…“減量しない格闘家”手塚裕之はなぜ我流トレーニングで強くなれたのか?「そもそも格闘技って非合理的なもの」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byNumber Web
posted2024/02/16 17:16
富士山ならぬ「ふじやま」をバックにポーズを決める手塚裕之。自然を利用したトレーニングで野生の勘に磨きをかけている
「科学的に……と言うけど、そもそも格闘技って非合理的なものじゃないですか。ボディビルダーだったらわかるけど、格闘技はそうじゃない。そんな小さなことを気にしていて強くなれるのか? と思っちゃいますよね」
自前のジムで「たけちゃん」とトレーニング
練習の拠点は、実家の横にある農具置き場だったガレージをリフォームして作ったプライベートジム、Tekka’s Gym Fighting Crew(TGFC)だ。かつて国内ではパンクラスのチャンピオンになったこともあるが、ここまでほぼ我流で強くなったことを自負する。
手塚は「自分の中にコーチを持っている感じ」と話す。
「自分でやるからこそ、柔軟な発想を持てるんじゃないかと。だから出稽古に行ったときもすごく吸収がいい」
出稽古先では耳をダンボにして、さまざまなジャンルの指導者や同業者の話に聞き入る。
「最近では(柔術で世界選手権3位の)橋本知之さんのところでお世話になりました。海外にはボクシングを習いに行って、研究しました。大切だと思ったことはすぐスマホにメモるようにしています」
地元に戻るや、練習パートナーである再従兄弟の「たけちゃん」こと手塚健哉(たけや)さんを呼び出し、二人三脚で反復を繰り返す。そして練習の合間には「このテクニックはいいけど、自分は使えないかも」「これは自分の体型にあったテクニックだよね」といった問いかけを忘れない。
「読書もそうだと思うけど、読んで終わりではなく、本の中身や感想を人に伝えることで自分の脳にも定着するじゃないですか。格闘技のテクニックも同じで、たけちゃんと話しながら反復することで身についていっている気がします。自分も誰かに教えられるレベルまで習得できていたら、初めて自分のものになったと言えるんじゃないですかね」
近隣の大田原市まで車を飛ばせば、手塚のもうひとつの所属先であるハイブリッドレスリング山田道場もある。格闘技ではしばしば都会と地方の練習環境の格差が問題となるが、手塚は栃木県を拠点に活動していることにハンディを感じていない。
「日帰りで東京のジムに行って帰ってきたり、早朝から東京で練習して戻ってきてから農作業をしたり……。そこまで都心から離れていないので、栃木はうまくやっていけるところなのかなと感じています」