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「熊出没注意」の山道を駆け抜け…“減量しない格闘家”手塚裕之はなぜ我流トレーニングで強くなれたのか?「そもそも格闘技って非合理的なもの」

posted2024/02/16 17:16

 
「熊出没注意」の山道を駆け抜け…“減量しない格闘家”手塚裕之はなぜ我流トレーニングで強くなれたのか?「そもそも格闘技って非合理的なもの」<Number Web> photograph by Number Web

富士山ならぬ「ふじやま」をバックにポーズを決める手塚裕之。自然を利用したトレーニングで野生の勘に磨きをかけている

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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「プロテインやサプリメントばかり気にしてないで、もっと米を食えよ!」――米農家と総合格闘技の二刀流ファイターは、いかにして筋骨隆々の肉体を手にしたのか。海外の格闘技団体で連勝を続ける手塚裕之に、実家の田んぼがある栃木県塩谷町で現地取材を敢行。階級制スポーツの常識を覆す“減量しない格闘家”の闘争哲学に迫った。(全2回の2回目/前編へ)

熊出没注意…大自然に鍛えられたビーストの持論

 手塚裕之はMMAファイターとして活動する傍ら、栃木県の実家で父親とともに米作りに励む“半格半農”ファイターだ。

「いまはこしひかりと飼料米を作っています。その前はひとめぼれを作っていましたね」

 さらに母親は無農薬野菜を栽培していた。実家で収穫した作物は、全て息子の血となり骨となった。

「地元のおいしい水を飲んで育ったことも良かったかもしれない」

 実家のある塩谷町には、全国の名水百選に選定された尚仁沢湧水が湧き出ている。まさに野性児を生み出すのに最適な環境ながら、添加物満載のジャンクフードを口にしなかったわけではない。

「子供の頃は逆にカップラーメンをおいしく感じて、めちゃめちゃ食べていました(笑)。でも母親の『インスタントなものも食べていいけど、その前にちゃんと米を食べなさい』という教育方針で、ラーメンは味噌汁感覚ですすっていましたね」

 人だけではなく、環境もワイルドだ。塩谷町は県内で最も人口の少ない町として知られ、県庁所在地である宇都宮市から車で1時間弱の距離にある。手塚は「熊が出ることもある」と打ち明けた。

「この間、ウチの庭で栽培していたトウモロコシが食べられ、フンが残っていました。遭遇したら、ヤバいですよね……」

 実際、熊と顔を合わせる可能性はあるのではないか。というのも、手塚は熊だけではなく鹿も出没するという近隣の山で、ジャパニーズ・ビーストという異名通り山道を駆け抜け、足腰を鍛えるというのだ。

 時には野生の勘を研ぎ澄ませるため、仲間とともに上半身裸に裸足という出で立ちで山行を実施することもあるという。

「野生を肌で感じながら、自発的な発想で練習できることが楽しい」

 スポーツ科学が発達した現在、摂取するタンパク質や炭水化物の量を細かくチェックする格闘家も少なくない。だが、そういった傾向に手塚は疑問を投げかける。

【次ページ】 自前のジムで「たけちゃん」とトレーニング

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