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将棋PRESSBACK NUMBER
「ヒート、体がバッキバキになるらしいですね」棋士・増田康宏26歳がNBAに学ぶ“AIと将棋のマインドセット”「食事や睡眠をイチから…」
text by
北野新太Arata Kitano
photograph byKeiji Ishikawa
posted2024/01/09 17:30
東京・将棋会館近くのバスケットゴール近くにて。増田康宏七段は、様々なスポーツからインスピレーションを得ている
「16年にジョシュ・リチャードソンが2巡目の下位指名ルーキーで入って来て、練習場でスリーポイントのシューティング(シュート練習)を始めようとした時、見ていたスポルストラが『ルールを設けよう』と声を掛けたらしいんです。『これから100本打って70本以上決めたら君の勝ちだ。でも、70本以下だったら君の負け。罰としてコートを往復するスプリントを5本やるんだ』と。リチャードソンは最初64本で届かなくて罰走して、次、疲れた状態で69本決めて、さすがに許されると思ったら『ルールは70本だろう』とスポルストラは再チャレンジを促したらしくて。
リチャードソンはさすがに反発したらしいですけど『反発する気持ちがあるならやれるはずだ』と返したみたいです。で、最後になんとか70本をクリアした時、スポルストラは『君がヒートで、NBAで活躍していきたいなら今日のようにハードワークを続けることを忘れるな』と言ったらしいです。リチャードソンは一流の選手になって、何チームを経て今季からヒートに戻りましたけど『あの時、スポルストラに言われたことは自分のキャリアにとってとても大きかったんだ』と明かしていて、今でも自分自身で70本のルールを課してシューティングしているらしいです。僕自身も、規律を守るということは、自分を再建しようとする中でとても重要視したことです。同じようにチームの再建に成功したブラッド・スティーブンス(セルティックス元ヘッドコーチ、現GM)、ニック・ナース(ラプターズ前ヘッドコーチ、シクサーズ現ヘッドコーチ)からも学ぶものがありました」
藤井さんに対抗するのはかなり難しい。だからこそ…
――今は藤井八冠が圧倒的な形で君臨しているため、再建に取り組む時期として適しているのかもしれませんね。
「今の藤井さんはケビン・デュラントが加入した頃のウォリアーズのようなもの(2016-17シーズン。前季にNBA記録の73勝9敗を記録した)なので、対抗するのはかなり難しいんです。だから、今を見るのではなく先を見据えようと思いました。今のところうまくいっているので、そろそろ再建期は終わりにしたいですね。A級に昇級した時が再建期を終える時です。A級棋士になって再建とか言っていられないので」
――A級を目の前にした今、思い返してみると、藤井八冠が増田さんを相手に29連勝をしてから7年になるんですね。